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10.312019
矢巾新附属病院を語る

9月21日、矢巾町にいよいよ新岩手医大附属病院が開院します。新しい施設は、手術、入院を中心とした高度な診断治療を行う特定機能病院として、北東北・北海道までをカバーする規模。病床1000床、世界に誇れる最新鋭の医療機器を備え、より高度な医療を提供する病院として生まれ変わります。
また、すでに移転を完了している岩手医大医学部、歯学部、薬学部、看護学部など、医療系総合大学との連携も強化され、多くの学生たちが学ぶ場としても、さらに発展が期待されます。その中、開院する新病院の様子や今後の展望を、小川彰理事長に伺いました。
●患者を中心にした効率の良い動線
「9月に新しい病院を矢巾町に移転しますが、新病院はあくまで患者ファースト。『患者さんにやさしい病院』をコンセプトに4、5年前から設計や整備を徹底的に考え、海外視察も行いながらよりよい病院にできるよう進めてきました。具体的なところを言えば、新病院は、『医者・医療人は患者さんのそばに』という理念のもと、緊急の場合にも即座に対応できるよう、医局を病棟に配置しています。これにより病棟で急変が発生したとき、患者さんのところに医師が三十秒でいけます。さらには従来の病院では検査や診察のたびに病院内の移動も大変でしたが、その負担を軽減するため、待合室を中心に置き、そのスペースを各診療科が囲むような形にして、高齢者の方を余分に歩かせないようにしました」と小川理事長。
●新たに設置した総合診療科の意義
また、新たに設置されたのが「総合診療科」です。外来では専門診療科を特定できない症状をしめす患者の診療を行う科で、2017年から岩手医科大学に専門の講座を設置し、力を入れてきました。ここでは原因を明らかにするために詳細な問診や診察を行い、場合によっては血液検査なども実施。病気だけでなく、患者の心理面や社会との関わりまで含め、「全人的」に関わることで「患者に寄りそう医療」に取り組みます。「患者さんに適切な科で診療していただくよう、システムづくりをしたわけです。医師は頭のてっぺんから足の指先まで、すべての症状を見ることができなければなりません。うちの病院では、まず総合診療科で3カ月間学んで、トレーニングしてもらってますよ」と笑う小川理事長。大学病院で学んだことは、地域医療に携わった時にも生かせるはず、と強く語ります。

●移転後の跡地は内丸MCとして機能
そして、近隣住民にとって関心が高いのが、病院移転後の跡地開発。どう変化するのかを尋ねました。
「内丸の病院は外来中心の『内丸メディカルセンター』として当面は運用して、いずれ改築する予定です。近隣の人たちが不便になってしまうのではないかとの声もお聞きしますが、利便性が損なわれることはありません。病院が二つに分かれるわけですが、『外来』『高度外来』『高度治療病院』の位置付けで連動しながら治療にあたることで充実した医療の提供ができると考えています。内丸病院は高機能の診断外来病院で機能させ、治療が必要なことがわかれば検査を全部すませて、矢巾の新病院にきてもらう。手術や短期の入院をしたのち、近くの病院に転院したり、メディカルセンターに通ってもらうことでいままで以上の医療を提供できます」と小川理事長。
また、「現在の建物で最も古い一号館は、建築家・葛西萬治氏が手がけた歴史的なもので、そのまま残したい」とも。多くの部分は解体することになり、その後の活用方法については、盛岡市や盛岡商工会議所などとも協議し、「空洞化を防ぐよう尽力したい」と話します。
学校法人岩手医科大学 理事長
小川 彰さん(69)
1949年3月、宮城県生まれ、1974年3月、岩手医科大学医学部卒業
東北大学脳神経外科入局。
以降、国立仙台病院脳神経外科医長、東北大学医学部助教授などを務め、
1992年10月岩手医科大学脳神経外科学講座教授、2003年同大医学部長、2008年1月同大学長。
その間に全国医学部長病院長会議会長、日本脳卒中学会理事長などを務める。
2012年2月学校法人岩手医科大学理事長(学長兼務)に就任。現在に至る。
2019年5月日本私立医科大学協会会長就任