その後、開校一期生として青森公立大学に進学。経営経済学を学び、地元に貢献したいと考え始めます。「小さい頃は家業を継ぐことも考えましたが、就活時には大学で学んだことを活かし、地元の発展に寄与したいと考えていました。そのなかでも、花巻を代表する温泉業が観光を元とした地元の発展につながるのではと思うようになりました」と語ります。
及川さんはこの思いを胸に、花巻温泉の門を叩きます。「入社当時、花巻温泉は千人規模の会社で、業者の出入りも多く、誰が社員なのか分からないまま現場業務に就きました。そのなか、温泉業務は一人完結の仕事ではなく、各部署への伝達、連携などを通した『おもてなし』なのだと強く感じました」チームの統率力の大切さを感じた及川さんは、現場経験を経たのち、営業、総務、総合予約部とマルチにキャリアを積んでいきます。培ったキャリアの中で特に印象的な出来事を尋ねると「総務部にいた時に東日本大震災が起こりました。当館は空港から一番近い宿泊施設ということで警察関係の方々や復興支援関連の皆さまを対応するということで、私は社員の緊急人員配置を任されました。当館自体、停電で自家発電に切り替えており、インフラも弱いなか、時間も関係なく対応していたためマンパワーが必要でしたし、配置は常に慌ただしかったのを覚えています。普段とは違う環境の中、非常に不規則な業務に誰一人として不平不満もなく、対応してもらえたことは花巻温泉の持つチーム力の凄さだとしみじみ感じました」。
震災という大きな経験を一丸となって乗り越えたことは及川さんの強さになったと言います。