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中国故言の叡智 ③「若い力」

 「とうだいもとくらし」の諺がある。本来は「燭台の下は暗い」の意である。
だが、もう燭台という物品を知る人が少なくなったので、
「灯台」と字で読んでも、航路標識の《灯台》としか思わない人の方が多くなってしまったのは仕方ない。
最近の辞典では、そのどちらでも意味的には共通するので、そのどちらでもよいかのように扱っている。
そんな感じで誤りの方が独り歩きしてしまって、正解の方を消滅させてしまうことまでは黙過できない。
このような事例がある。それは「後生畏るべし」というBC五〇〇年代の学者・思想家である孔子の言葉である。
出典は秀れた門人たちによって編された孔子先生の言行録の『論語』である。
先人が教えさとした名高い言葉は諺でなく箴言と呼ぶが、『論語』は日本人がよく知る箴言が満載されている。
箴言はほとんど耳で聞いて知っているものが多いので、今日では誤った解釈と気付かず誤用が目立つ。
「後生畏るべし」とは「後の世はどうなるかわからないので怖い」とか、印刷・出版界では若い人は本気で、
「校正恐るべし」といって、失敗を怖がっている戒めと思い込んでいる例を知った。どうしてそうなったかは、
最初は〝もじり〟〝ジョーク〟が流行したのがきっかけで、いつのまにかそうなってしまったらしい。
これは後生(若い人たち)の将来を期待して、その可能性を尊び重んじた〝畏るべし〟という意味の小束なのである。
これぞ今日もっとも重んじられている、次世代への心暖かいメッセージではなかろうか。
この箴言に寓されている真意は、英才教育の成果なぞではない。師を慕い、
弟子を信頼した人間関係のキーワードの心が奥深くに秘められていることを悟るべき箴言と重んじたい。

文芸評論家 吉見正信

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