プライマリ・ケアの専門家でもある下沖先生は、岩手県九戸村出身。豊かな自然のなかで近所のお年寄りたちと触れ合いながら幼少期を過ごしました。遠くの大きな病院まで行かなければ手術など専門的な医療が受けられない地域で育つなか、地域医療の必要性を感じ、医学の道を選択しました。
自治医科大学卒業後、県立中央病院での研修医を経て県立釜石病院、県立住田病院、陸前高田市国保広田診療所、県立久慈病院、県立千厩病院と地域医療に従事。エリアも規模も異なるさまざまな医療機関での経験が、プライマリ・ケアをはじめ医療に対するマインド形成のベースになったといいます。 「私は外科医ですが、住田病院では内科医の院長と2人で、広田診療所では私1人で内科、外科、小児科、訪問診療、学校検診など幅広く経験させてもらいました。これらの経験が、総合的全人的にみる素地を作ってくれたと思います」。
地域医療に求められるのは、すべての患者を受け入れ、必要に応じて次の医療へとつなぐこと。患者のニーズのみならず医師不足・高齢化など社会のニーズへの対応も求められるハードな日々が続くなか、下沖先生を支えてきたのは「外科医は柳の木だ」という先輩に教わった言葉だったといいます。大きくしなっても決して折れない柳の木のように、諦めずにタフに患者に寄り添ってきた経験が、誰でも何でも相談できる「プライマリ外来」の開設につながっていきました。