高倉工芸を立ち上げ父親や一緒に働く職人さんたちから教わりながら本格的に箒作りを始めた高倉さん。より良い南部箒を多くの人に届けたいと考えます。「昔は手で種をまいていましたが畑の面積を広げたので機械を導入しました。種をまく間隔や量の調整が大変で、年に一度しか種をまかないので結果がすぐにわからず、調節に時間がかかりました。誰が触れても安全な箒にしたかったので無農薬でホウキモロコシを栽培するにはどうしたらいいか、など試行錯誤ばかりでしたが楽しかったです」と笑いながら振り返ります。
そんな南部箒のたくさんの魅力を知ってほしいと全国で実演販売を行うため各地に出向くと、都会の人へ良さを伝えるのに苦労したと言います。「言葉遣いが慣れなくて、うまく伝えられず悔しかったです。どうしたら伝わるか悩みましたが他の出店者の様子を見て、話し方や接客のやり方など参考にしました」とここでも試行錯誤を続けます。次第に足を止め話を聞いてくれる人が増え、思いが伝わるように。リーマンショックや震災で物産展が中止され販売ができない状況でも、南部箒へのこだわりは落とすことなく作り続け、共に働く職人の一人が優れた技術者に送られる、岩手県の卓越技能者に選ばれるまでに。その技術の高さは全国に広がり各地の愛用者から声をもらえるようになり、最近では海外からも注文が入ってくると言います。
代表が高倉さんに代わると、お客さんの声に合わせた商品の開発にさらに力を入れていくように。「化学物質過敏症でも使える箒が欲しいと言われ、すべて自然由来の箒の開発を始めました。装飾部分を藍染や紅花染めの職人さんに染めてもらい、その絹糸で編んだ箒を今もずっと使ってもらっています」と手に取ってもらい良かったと言ってもらえる箒を作り続けたいと高倉さん。その熱い思いは父から継いだ南部箒に強く編み込まれています。