新型コロナウイルス感染症、少子高齢化社会、医師不足など岩手県の医療を取り巻く環境はさまざまな課題を抱えています。異常気象など環境の変化による災害も多発する中、想定外の事態を予測し、災害発生時に即時に対応できる医療体制の整備が求められています。県民の健康と安全のため、さまざまな活動を行う一般社団法人岩手県医師会。組織の役割と課題解決に向けた取り組みについて、今年6月に新会長に就任した本間博さんにお話をお聞きしました。
「県医師会では岩手県、岩手医科大学、郡市医師会との連携のもと、県内全域の医療課題を把握・共有し、課題解決に向けた取り組みを行っています」と本間会長。多岐に渡る事業を行う中、「新型コロナウイルス感染症への対応」が大きな柱となっています。
具体的な対策としては、昨年度は全国で唯一、県職員が県医師会に常駐し綿密な情報共有を行ったとのこと。その成果として、医師や看護師の効率的な派遣を実現し、集団接種をはじめスムーズなワクチン接種につながりました。また、東日本大震災の被災地医療支援のために整備した「肋骨対応システム」も、現在の医療体制を支えています。
「何度も被災地に足を運び現状分析し、何ができるか考えてきました。横に伸びる肋骨のように内陸から沿岸へ最短で支援を送るシステムがその一つです。例えば陸前高田市には一関市から医師を派遣するというように、東北本線を人の背骨に見立てて支援網を作ります」。「予期せぬ災害や感染症などに備え、県内全てのエリアの医療を守り続けるためにも、岩手県の大きな課題である医師不足を解消しなければならない」と続けます。これに対し県医師会では岩手県、岩手医科大学と連携し、岩手県出身者に特化した奨学金や地域枠制度を設けて、医療に携わる人材が、岩手に残ってもらう対策を講じています。
東日本大震災、新型コロナウイルス感染症、異常気象による水害など過去に例のない災害に直面し、岩手の医療従事者の意識も大きく変化しています。「これまでになかったような災害が起きることを想定し、可能な限り備える必要があります」と本間会長。本県では、医療物資の十分な備蓄に加え、水害などにより橋が通行不可能となった場合を想定するなど、患者の搬送ルートの確保や受け入れ可能な医療機関の検索システムの運用など、いざという時にすぐ動けるような訓練も実施しています。