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57年、漆器一筋。

16歳で漆器の道へ

 「16歳で弟子入りし、ずっと漆器の世界でやってきました。こうして思いがけず賞をいただくことができ、この道を選んでよかったなと思います」  そう話すのは、盛岡市の浄法寺塗製造元「うるみ工芸」の代表で、伝統工芸師第一号の勝又吉治さん。今年の11月、厚生労働省が表彰する卓越技能者「現代の名工」に選ばれました。  73歳の勝又さんは、旧安代町(現在の八幡平市)荒沢地区生まれ。「浄法寺塗」のルーツとされる「荒沢漆器」が盛んだった地域で、勝又さんの家は代々漆器づくりに携わってきました。  「系譜をたどると私が18代目になるようだから、400年以上は続いていると思います。小さい頃は工房が遊び場で、父の内弟子によく相手してもらいましたね」と振り返る勝又さん。その後、工房の移転に伴い一家で盛岡市へ。16歳で父・吉郎さんに弟子入りし、以来代々続く技法の継承と技の研鑽に励んできました。  職人として日々技を磨く一方、全国の展示会に出展し、当時まだ知名度の低かった浄法寺塗を積極的にPR。「中でもうれしかったのは、関西のある商社が『漆器フェア』ではなく『浄法寺塗 勝又吉治フェア』を開催してくれたこと。そこまで作品に惚れ込んでくれたこともうれしかったし、品切れになるほど評判もよくて。全国を歩き回って浄法寺塗を伝え続けてきたかいがあったと思いました」

職人に「一人前」なし

 昭和62年には、全国初の浄法寺塗伝統工芸士に認定。職人として第一線で活躍しながら、現在5人の弟子を抱える勝又さん。これから挑戦したいことはと訊ねると「今まで通り、気を抜かないこと」という返事。57年のキャリアを誇り、このたび岩手で65人目となる「現代の名工」に認定されても「職人の道に『一人前』はありません。今まで以上に腕を磨き、後に続く人を育てていきたい」と話します。  そんな勝又さんの「元気の秘訣」は、「身体を動かすこと」。普段は座って作業することが多い分、デパートではなるべく階段を使うようにしたり、あえて展示会場から遠いホテルに宿泊し、歩いて移動することを心がけているそうです。  「いい作品をたったひとつ作るのではなく、高品質のものを何個でも作ることができるのが職人だと思っています。だから職人は身体が資本。いいコンディションで、いい仕事をしていきたい」と話してくれました。

滝沢市にある工房が勝又さんの仕事場。周囲には300本もの漆の木があり、漆の精製も自社で行っています。

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