シニア世代の間で、爪白癬(爪みずむし)に罹患する方が非常に多く、一般的な感染症であることをご存じでしょうか。高齢化が進む日本では、爪や足に異常を感じる人が増えています。
最新の調査では、足白癬(足みずむし)は日本人の7人に1人、爪白癬は13人に1人が罹患しているとされ、70歳以上の高齢者ではその割合がさらに高くなります。今回は爪白癬とはどのような病気か、放置するとどうなるのか、そして、その予防法と治療方法について解説します。
爪白癬は、主に「白癬菌」という真菌が原因の爪の感染症です。爪白癬になると次のような症状が現れます。
【爪が変色する】
黄色や白っぽく濁った色に変わり、透明感がなくなります。
【爪が厚くなる】
分厚くなり、爪切りで爪が切れなくなります。
【爪がもろくなる】
割れやすく、欠けることが多くなります。
【爪が変形する】
変形し、他の足の指や皮膚に刺激を与え痛くなることがあります。また、爪が曲がり、巻き爪になることもあります。
高齢者は皮膚が乾燥しやすくカサカサしていたり、動脈硬化などにより血のめぐりも悪くなりやすく、爪の成長速度が遅くなることで爪白癬への感染率が高まります。また、糖尿病や神経疾患などを抱えている人はさらに感染しやすいとされています。
「爪白癬は見た目の問題だけだから大したことはない」と思う人もいるかもしれません。しかし、放置すると次のような深刻な事態を引き起こす可能性があります。
【歩行困難になる】
爪が厚く変形すると靴に圧迫され、痛みが生じます。この痛みが原因で歩行が困難になり、転ぶ危険性が高くなることがあります。爪が厚くなり自分自身で足の爪が切れないことを想像してみてください。がっかりすることでしょう。
【二次感染の危険性がある】
割れた爪や傷ついた皮膚は細菌感染を引き起こす入り口になります。特に糖尿病の患者さんでは、炎症が広く及び、足の切断にまで至るケースもあります。
【精神的ストレスを引き起こすことがある】
歩く時に痛みを感じるため、外出を避けたり、汚い爪を他人に見せたくなかったりなど、周囲との交流を避け、塞ぎ込みがちになるなど生活の質に影響を及ぼすことも少なくありません。
爪白癬は早期発見、早期治療が望ましい病気です。自分の足で気になる症状があれば、医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
岩手医科大学
皮膚科
井上 剛
■取材協力