普段は医療に関する記事をお届けしておりますが、今回は少し視点を変えて『献体』についてお話ししたいと思います。皆さんは献体について考えたことはあるでしょうか。
献体とは「医学・歯学の大学における解剖学教育・研究に役立てるため、自身の遺体を無条件・無報酬で提供すること」を指します。これは生前「遺体を死後、医学・歯学の教育・研究に役立てたい」と希望された方が、生前から献体を希望する大学や関連団体に登録し、亡くなった際にご遺族や関係者がその遺志に基づいて遺体を提供することで、はじめて献体が実現します。
今日ほど「医の倫理」が強調され、良医の育成が強く求められている時はないと思います。医師・歯科医師をはじめ医療人を目指す学生たちが、献体されたご遺体を用いた「解剖学実習」を通じて、解剖学の知識を習得するだけではなく、ご遺体に真剣に向き合い、感謝の気持とその期待に応える責任感、そして倫理観を身に付けています。さらに近年では、解剖の成果を医学や社会に還元し、医療の発展に貢献することを目的とした高度な手術手技や新しい術式の開発を目的としたCadaver surgical training (カダバーサージカルトレーニング・CST)と呼ばれる取り組みも行われています。これは、解剖学の教育のみならず、医学の進歩にも大きく貢献しています。
このように献体の最大の意義は、自らの身体を通じて医学教育に参画し、優れた医師・歯科医師の養成に貢献することです。さらに、次世代の医療を担う人々のために尽力できるという点でも、非常に価値ある行為だと言えるでしょう。
なお、岩手医科大学には篤志献体の会『白寿会』がございます。詳細につきましては、下記の連絡先までお問い合わせください。
岩手医科大学 白寿会
岩手県紫波郡矢巾町 医大通1丁目1-1
岩手医科大学学事課
019-651-5111 (内線5013)
岩手医科大学
解剖学講座細胞生物学分野 解剖学講座
齋野朝幸
■取材協力