弓道は私の支え

弓道は私の支え

インタビュー
岩手県弓道連盟理事 高橋良子さん
岩手県弓道連盟理事
高橋 良子 さん
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●弓道が私の世界を広げてくれた

 キリッと冷えた真冬の道場に立つのは、岩手県弓道連盟理事の高橋良子さん。高校教師として長年弓道部の指導に当たり、定年退職後は大学やスポーツ少年団での指導のほか、中学校での弓道授業の導入を推進するなど弓道の普及に努め、2023年に「生涯スポーツ功労者」に選ばれました。

 子どもの頃から体を動かすことが好きで、中学校では女子バスケット部を創部。「栗拾いをして、栗を売ったお金でバスケットゴールを買いました。為せば成るんだなと思いましたね」と懐かしむ高橋さん。高校では、友人に誘われて何となく弓道部へ。「そこで指導をしていた大沢万治先生(弓道範士十段)との出会いが人生を変えました」と、弓の道へと導いた恩師との出会いを振り返ります。

 大沢先生の指導のもと心技体を磨き、高校3年生で宮崎インターハイに出場。その年の岐阜国体には、指導者の大沢先生も一般選手として一緒に出場しました。「試合であちこち行ってとにかく楽しくて、田舎生まれの私の世界がどんどん広がりました」。岐阜国体の帰り、日本一の道場と称される三重県の神宮弓道場に立ち寄りたいと大沢先生に話した際に「自分の力で来なさい」と言われたことが今の自分につながっていると話す高橋さん。「そこで開催される全日本女子弓道選手権大会に出られるような弓道人になりなさい、ということだったんだと後で気付きました」。大会への出場を心に誓い、弓道を続けながら自分の世界をさらに広げるために中京大学へ進学。ここでも女子弓道部を創部し、愛知県代表として福井国体に出場、長崎国体では優勝しました。  そして岩手国体の年に大学を卒業し、体育教師として岩手にUターンした高橋さん。弓道の大会会場である岩手県立水沢高等学校に着任し、生徒の指導をしながら高橋さん自身も一般選手として出場しました。そして、指導した高校女子は優勝し、一般女子も優勝。岩手県も総合優勝という輝かしい成績を残し、また、全日本女子弓道選手権大会にも33回出場し、40歳で挑んだ第20回大会で見事優勝を果たしました。

●弓道は心を磨くスポーツです

 岩手県内の高校で約40年に渡り弓道部の指導を行ってきた高橋さん。定年退職後は、中学校での弓道の授業の普及やスポーツ少年団を創設するなど、ジュニアの指導に力を注いでいます。「その中で感じるのは子どもたちの変化、目がキラキラしてくるんです。的を見つめるその眼差しが何かに吸い込まれるように一心に集中していく、そういう心の動かない姿はいいですね」と笑顔に。限られた時間の中で1本でも多く矢を引くために走って矢を取りに行く姿、正しい弓を引けるように基本をしっかり体得しようと努力する姿。「子どもたちのそういう姿や変化に私が喜びを感じます。私がそうだったように、一人でも多くの子どもに弓の道で自分の世界を広げてほしい」と目を輝かせます。

 これからのことをお聞きすると、最近、自分自身の変化を感じると高橋さん。「だんだん体が思うようにならなくなるでしょ。心技体のバランスが崩れてきたんです。それを克服しながら弓の道を歩み続けることが、わが道です」と話します。道場に入った瞬間から自然に集中し「無」の状態でポンと引く理想の一本は、1年に1本あれば幸せとのこと。「弓と一体になれればいいんですけどね。その悩みを40年来の長崎の恩師に相談したら『錬りなさい』って、つまり努力が足りないということですね」と、自分と向き合い技と心を錬る日々。人生の支えである弓道に出会えたことに感謝しながら、これからも弓の道を歩み続けたいと話してくれました。

プロフィール

1947年、九戸村生まれ。岩手県立福岡高等学校から中京大学に進み、体育教師として県内の高校で弓道部の顧問を務める。全日本女子弓道選手権大会に33回出場し1987年の第20回大会で優勝。岩手県弓道連盟理事、盛岡市弓道協会会長、いわて弓道ジュニア代表。2023年度生涯スポーツ功労者

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