● 努力を重ねる姿勢
岩手を代表する大型総合リゾート「花巻温泉」。コロナ禍では一早い感染予防対策を始め、現在も安心したひと時の提供のために日々取り組んでいます。その今年で94年を迎えた花巻温泉が、その先の創業100周年に向けての若い力として、総支配人に抜擢されたのが及川悟さんです。
及川さんの生まれは、花巻市東和町。両親は地元で商店を営んでおり、物心ついた頃から手伝いをしていたとか。「小さい頃から店番や、配達など手伝っていました。小学生になると、親は仕事でいないことが多かったので弟の面倒を見ながら、食事を作ったりしていましたね」。
幼少期から努力をすることを苦にしなかった及川さんは、小学4年に野球を始め「練習を重ねることでできるようになることが楽しかった」と自己成長を楽しみ、中学、高校と学級委員長をするなど、文武両道を目標に頑張ったと言います。
● 貴重な経験から得たチームプレイ
その後、開校一期生として青森公立大学に進学。経営経済学を学び、地元に貢献したいと考え始めます。「小さい頃は家業を継ぐことも考えましたが、就活時には大学で学んだことを活かし、地元の発展に寄与したいと考えていました。そのなかでも、花巻を代表する温泉業が観光を元とした地元の発展につながるのではと思うようになりました」と語ります。
及川さんはこの思いを胸に、花巻温泉の門を叩きます。「入社当時、花巻温泉は千人規模の会社で、業者の出入りも多く、誰が社員なのか分からないまま現場業務に就きました。そのなか、温泉業務は一人完結の仕事ではなく、各部署への伝達、連携などを通した『おもてなし』なのだと強く感じました」チームの統率力の大切さを感じた及川さんは、現場経験を経たのち、営業、総務、総合予約部とマルチにキャリアを積んでいきます。培ったキャリアの中で特に印象的な出来事を尋ねると「総務部にいた時に東日本大震災が起こりました。当館は空港から一番近い宿泊施設ということで警察関係の方々や復興支援関連の皆さまを対応するということで、私は社員の緊急人員配置を任されました。当館自体、停電で自家発電に切り替えており、インフラも弱いなか、時間も関係なく対応していたためマンパワーが必要でしたし、配置は常に慌ただしかったのを覚えています。普段とは違う環境の中、非常に不規則な業務に誰一人として不平不満もなく、対応してもらえたことは花巻温泉の持つチーム力の凄さだとしみじみ感じました」。
震災という大きな経験を一丸となって乗り越えたことは及川さんの強さになったと言います。
● 支配人としてのこれからの思い
今年6月、及川さんは取締役総支配人に就任。これまでの経験のなかで貫いていることを話します。「私の信条として、決断に後悔はしないというものがあります。コロナ禍の中で会社も非常に大きな影響を受け、大きな決断が出てくることでしょう。後悔のない決断がチームの自信に変わる」と及川さん。
「決断のスピード感が問われる時代に、新しい感性を持つ若い社員の声を積極的に取り入れていきたいと思っています。花巻温泉の味を自宅で楽しめる外販事業やオンラインショップの取り組みも、若い社員の活躍が光っております。これからも新しい声はどんどん取り入れていく環境にしていきたいです」。
従業員、お客さま、一人ひとりに対しての思いや、向き合い方はしっかりと伝承しながら、柔軟に変化していく花巻温泉。今までの経験を元に、チームプレイを大切にする及川さん。花巻温泉の若い力とともに、さらなる地域の発展へとつなぎます。