「地元で伸び伸びと子どもを育てたい、和紙にも関わりたいと思い帰って来ました」と話すのは、鈴木さんのもとで修行する佐藤知美さん。6年ほど前から鈴木さんの工房に通い始め、和紙のゴミ取りなどを勝手に手伝い、「ちょうすな(触るな)」と注意されながら何度も足を運ぶうちに、顔と名前を覚えてもらったといいます。
「木を切って、叩いて、こんなに手間をかけて手作業で和紙を作るってすごいと思いませんか」と佐藤さん。2016年から3年間、鈴木さんも講師を務める「東山和紙後継者育成支援事業」で本格的に紙漉きを学びました。 「最初にコウゾの苗を植えましたが、植え方が悪かったのか根付かなかったんです。トロロアオイも根っこを太らせることができませんでした」と振り返る佐藤さん。諦めずに栽培を続け、昨年は師匠も認める出来栄えとなりました。
「知美さんが作ったニレはすごく良かった。私も使わせてもらったし、中学生の紙漉き体験にも使いました」と、弟子の成長を喜びます。「先生は、本当は本業でできる人が欲しいと思いますが、そんななかでも、丁寧に教えていただけてありがたい」と話す佐藤さん。
年齢的に、あと数年で漉けなくなるだろうと話す鈴木さんは「会社勤めと、子育てとの三足のわらじながら、紙漉きを続けてくれてありがたい」と引退後は、原料を栽培する畑も佐藤さんに引き継ぐといいます。