政界、芸能界、スポーツ界などの有名人にも脳卒中を起こした患者さんが少なからずいますので、この病気自体を知らないことはないと思います。しかし脳卒中は脳神経外科だけが診療する病気と思われている方が意外と多くいらっしゃいます。今回は脳卒中と脳神経内科の関係についてお話します。
実は、脳卒中は私たち脳神経内科が関わる病気の中でも最も多い疾患の一つです。後遺症が残る病気でもあることから介護が必要になる原因疾患の筆頭にあげられています。脳神経内科では脳卒中の診断から治療、後遺症に対するケアやリハビリテーション、社会福祉資源の利活用の手配など、全経過を通じて関わっています。
そんな脳卒中ですが、3つの病型があることを意外と知らない方がいらっしゃいます。 ① 血管が詰まるのが脳梗塞。 ② 血管が破れて脳内に出血するのが脳出血。 ③ 血管(特に脳動脈瘤)が破れて脳の外側に出血するくも膜下出血。 以上の3つになります。患者数は約150万人、毎年25万人が新たに脳卒中を発症していると推測されており、寝たきりになる原因の約3割とされています。
従来、脳神経内科は主に脳梗塞と脳出血を担当し、脳神経外科はくも膜下出血を担当するのが一般的でした。脳梗塞でも動脈硬化を背景とする頸動脈閉塞症(頸動脈の血管にコレステロールなどがたまり、動脈硬化も加わって血管が詰まった状態)が原因の場合には狭窄及び詰まった原因である動脈硬化病変を外科的に切除する血栓内膜剥離術が必要となります。また脳出血でも大きな脳出血のために血腫除去術が必要な場合などには脳神経外科が治療を担当します。医療技術の進歩により、脳梗塞の一病型である脳塞栓症では血管カテーテルを用いた血栓回収術が広く行われるようにもなりました。近年は、診断はもとより治療も含めて、脳神経内科と脳神経外科が協同して当たることが望ましい診療体制と考えます。岩手医科大学ではまさにこうした体制下で脳卒中診療を実践しています。
脳卒中死亡率全国最下位になったことがある岩手県。そのため岩手県脳卒中予防県民会議は「脳卒中死亡率全国ワースト1からの脱却」をスローガンに毎月28日を「いわて減塩・適塩の日」と定めています。そして日本脳卒中協会は毎年10月を脳卒中月間と定めています。皆さんも脳卒中の発症防止のため、特に生活習慣病の予防にはご注意をお願いします。
内丸メディカルセンターは、紹介状の有無に関わらず受診が可能です。
岩手医科大学
脳神経内科・老年科
前田哲也
■取材協力