63歳の新たな挑戦

63歳の新たな挑戦

インタビュー
どぶロック代表 千葉志津子さん
どぶロック代表
千葉志津子さん
(71)

平泉の顔になる土産品を作りたい

 中尊寺、毛越寺をはじめ、多くの観光客が足を運ぶ世界遺産の町・平泉町。ここで、60代から80代の女性グループ「どぶロック」が、どぶろく作りに励んでいます。工房にお邪魔すると、代表の千葉志津子さんをはじめ気心知れた仲間と会話を楽しみながらテンポ良く作業を進める姿が印象的でした。

 30年以上にわたりレンタカー会社を経営してきた千葉さんが、どぶろくを作り始めたのは今から7年前のこと。「平泉に道の駅ができることになって、立ち上げメンバーを引き受けたのが始まり」と千葉さん。平泉を代表するお土産品がないことが課題となる中「平泉町産の米でどぶろくを作ったらどうか」という千葉さんの呟きが採用され、町との協力を取り付けたことが人生の転機となりました。「私は全く経験がなかったけれど、どぶろくを作ったことのある方が一緒にやりたいと言ってくれて。他にもやりたい方が次々と見つかって5人組『どぶロック』を結成しました」。平泉町が「どぶろく特区」に指定され、お酒作りに参入しやすい環境だったこともあり、千葉さんの新たなチャレンジがスタートしました。

簡単ではない だから面白い

 岩手県工業技術センターの指導のもと、2016年に本格的にどぶろく作りを始めた「どぶロック」。「どぶろく特区全国第一号」の遠野市を視察するなど、苦労して学びながら仕込んだどぶろくは「一音(いっとん)」と名付けられ、「道の駅 平泉」のオープンに何とか間に合い、平泉の新たなお土産品として2017年4月に発売されました。

「仙台や東京の物産展に出店するようになって、意外と若い女の子が買ってくれることに気付いたんです。発酵食品は体にもお肌にも良いので、女性向けを作りたいねとメンバーで話している中で、ピンクのどぶろくのアイデアが生まれました」と千葉さん。再び岩手県工業技術センターに相談し、赤色発酵酵母で仕込むことになりました。「ところが非常にデリケートな酵母で、一週間でダメになるんです」。弱く繊細で「一音」の酵母にも負けてしまうため、隔離して仕込むなど試行錯誤を繰り返し、2019年にピンクのどぶろく「與樂(よらく)」が完成しました。  63歳でどぶろく作りを始め、工房の建設費用に300万円、さらに数百万円を費やし工房を建て直した千葉さん。「うまくいくかどうかなんて考えない、面白いと思ったらやっちゃう。だって、やれば良かったなと後悔するより、やって失敗した方がいいでしょ。私の挑戦に賛同してくれた主人には感謝しています」と話します。失敗もありましたが、大変だったことは一つもないとのこと。志を共にする仲間と挑戦し誕生した白とピンクのどぶろくが、平泉を訪れた人たちの記憶に残れば嬉しいと話します。

白い「一音」とピンクの「輿樂」。「輿樂」はアルコール度数が低くハート瓶仕様も

プロフィール

1952年生まれ、一関市花泉町出身。一関第二高等学校卒業後、就職で横浜へ。20歳でUターンし、21歳で結婚。1987年に「有限会社 平泉レンタカー」を設立し代表に就任。2016年に地元の仲間と「どぶロック」を結成しどぶろく作りを始める。「株式会社 浄土の郷平泉」取締役総務部長。趣味は30年以上続けるゴルフで、ホールインワン達成経験も。

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