最近、食事の時に喉につかえたりむせたりすることはありませんか。年齢と共に歯の本数が減ることで咀嚼力が下がり、飲み込む力も徐々に衰えて、高齢者が正月に餅を喉に詰まらせたという話はよく聞くところです。それでは、若年者と高齢者の違いとはなんでしょうか。
以前の特集でも紹介されていましたが、摂食嚥下には先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期の5期があります。それぞれに知覚と運動が関わっていますが、ここでは特に咽頭期についてお話しします。
喉は空気・食物の通り道で咽頭、喉頭からなります。空気は咽頭→喉頭→気管→肺と流れ、食物は咽頭→食道→胃へと流れます。咽頭・喉頭領域の感覚ですが、脳神経である舌咽神経、ならびに迷走神経の枝である上喉頭神経によって知覚されます。
知覚面では、迷走神経の枝である上喉頭神経が徐々に機能低下をきたし、若年者では喉頭侵入(喉頭に入るが声帯は越えない状態)を起こしたら軽くむせていたものが、高齢者では喉頭侵入では反射が起きず誤嚥(気管まで垂れ込んだ状態)して初めて咳反射がでるため、かなり苦しい思いをすることとなります。これは安全装置が働かない状態と言えます。喉頭蓋とは食物が肺に入らないように防いでいる『フタ』です。
運動面では、口腔内で作った食塊が喉頭蓋谷(舌の付け根のくぼみ)にたまり、喉頭の喉頭蓋の周りのヒダに沿って左右に分かれて落ちてゆき左右の下部にある凹みから食道に落ちていきます。この際、喉頭蓋が文字通り喉頭(声帯~気管)のフタになるように倒れこみます。これは、舌骨(顎の下にある骨)及び甲状軟骨(喉頭の外側のフレーム)が前上方に移動することで喉頭蓋が倒れこむ仕組みとなっているためです。この動きがうまくできないと嚥下が困難になります。特に加齢や疾患に伴うサルコペニア(筋力の低下)を起こすと前頸筋群の筋力低下も同時に来たし飲み込みが悪くなります。
最後にサルコペニアの診断基準と予防法を載せておきます。
岩手医科大学医学部
耳鼻咽喉科頭頸部 外科学講座
阿部俊彦
■取材協力