前回はリウマチや膠原病についてと最近の診療の傾向についてお話しました。今回は治療の注意点についてお伝えします。
シニア世代のリウマチや膠原病の治療には、特別な注意が必要です。それは、若い人と同じ治療方法では、うまくいかないことが多いためです。シニア世代では、年齢とともに免疫力が低下し、同時に、老化により体内でIL-6やTNF-αといった「炎症性サイトカイン」(炎症時に体内で増える物質)が分泌され、慢性的な炎症が起こります。このように、シニア世代では免疫が弱っている一方で、体内に炎症が続いているという、矛盾する状態が同時に存在しています。この複雑な状態が、シニア世代の治療を難しくする原因と考えられます。
例えば、炎症を抑えるための抗炎症薬は、免疫機能も抑えてしまいます。そのため、免疫力が低下しているシニア世代に若い人と同じように抗炎症薬を使うと、免疫力がさらに低下し、感染症にかかりやすくなったり、がんが進行したりする可能性があります。こうした理由から、治療が難しくなり、効果が出にくいことがあります。
また、高齢のリウマチや膠原病の患者さんは、加齢や生活習慣によって引き起こされる他の病気を持っていることが多いです。例えば、動脈硬化が原因で起こる脳心血管疾患や、喫煙や免疫の異常から起こる肺の病気、年齢による腎臓の働きの低下が原因で起こる腎不全などが挙げられます。これらの合併症があるために、リスクなどのことを考えるとリウマチや膠原病の治療が十分にできないこともあります。
今後、老化に関する研究が進み、老化細胞と慢性炎症の関係が詳しく解明されれば、年を取ってから発症するリウマチや膠原病を防げるようになるかもしれません。そうすれば、シニア世代の治療もさらに改善され、健康的に年を重ねることができる時代が来ることが期待されます。
岩手医科大学
リウマチ・膠原病・ アレルギー内科学講座
仲 哲治
■取材協力