前回はこの時期に気になる乾燥肌(乾皮症)について説明しました。今回は、乾皮症に対する治療についてお話しいたします。
乾皮症に対する治療の基本は、まず第一に保湿クリームを塗ることです。水を飲むと乾燥肌が良くなるという誤った情報がありますが、たくさん水を飲んでも皮膚の乾燥は治りません。乾燥肌の原因はあくまでも皮膚が水分を保持できないことが原因です。特に中高齢者の方は水分を保つ機能が低下し肌が乾燥しやすくなりますので、注意が必要です。
保湿クリームの使い方ですが、最も効果的な方法は、入浴後にできるだけ早く、乾燥部位に保湿クリームを塗ることです。なぜなら水分が皮膚から飛んでしまう前に塗ると高い効果が得られるからです。目安としては入浴後15分以内に塗ると良いといわれています。保湿剤の外用を習慣的に行い、湿疹がある場合には副腎皮質ホルモン外用薬を用いた湿疹の治療も行っていきます。そして、かゆみが強い場合にはかゆみどめの飲み薬(抗ヒスタミン薬内服)を追加で出すこともあります。
さらに、低湿度状態にならないようにする生活環境・生活習慣の改善が重要です。例えば、せっけんはよく泡立ててから、泡を手のひらに取り優しく洗う、強くこすらない、洗浄剤の過度な使用を控える、そして、十分に洗い流す、などです。そして、繰り返しになりますが、入浴後は早めに保湿クリームを塗ることが重要です。また、こたつやエアコンなど皮膚を乾燥させる器具については適切な使用を心がけることも必要です。日光も皮膚を乾燥させることが知られていますので、これから暖かくなってきますが日光浴や春の散歩は適度に。紫外線対策も行いながら外出するようにしましょう。
保湿剤は、皮膚を被覆することにより水分蒸散を抑えて角層水分量を増加させる「エモリエント」と、水溶性成分を含み皮膚の水分量を増加させる「モイスチャライザー」があります。それぞれ長所、短所があるのでどちらが自分に合うか、皮膚科の専門医にご相談ください。
岩手医科大学医学部
皮膚科学講座
天野 博雄
■取材協力