【50歳以上は気をつけよう】2.帯状疱疹の治療

【50歳以上は気をつけよう】2.帯状疱疹の治療

いわて医療通信
岩手医科大学 いわて医療通信

 前回、「帯状疱疹」についてその全体像を大まかに記載いたしました。読まれた方はなんとなく痛みが強い印象をお持ちになったかと思います。今回はまず、その治療方法についてご説明いたします。

 帯状疱疹は、水ぼうそうの原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化することで発症し、皮膚に赤い発疹と強い痛みを伴います。この帯状疱疹を引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスはよく口のまわりや陰部に痛みのある小さな水疱を引き起こすヘルペスウイルスの仲間に属しています。原因がウイルスであるため、治療の基本はこのウイルスの増殖を抑える「抗ヘルペスウイルス薬」の投与です。

 この薬は発症後できるだけ早く、特に72時間以内に使用することが重要です。早期に治療を開始することで皮膚症状の悪化を防ぎ、痛みを和らげ、合併症や後遺症を予防する効果が期待できます。また、帯状疱疹の痛みには個人差があるため、必要に応じて消炎鎮痛剤などの補助的な薬も使われることがあります。

 しかし、帯状疱疹の皮膚症状が治まった後でも、長期間にわたって痛みが続く場合があり、「焼けるような」、「締め付けるような」、「ズキンズキンとする」痛みが代表的なものです。これを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼び、神経が損傷することで痛みが持続する後遺症です。特に高齢者や症状が重い方では、この後遺症になりやすい可能性が高いため注意が必要です。統計によると、50歳以上の患者さんのうち約2割の方がこの後遺症を経験するとされており、その中には数カ月から数年にわたって痛みに悩まされる場合があります。PHNの治療は、通常の痛み止めだけでは効果が不十分な場合が多く、プレガバリンやガバペンチンといった神経障害性疼痛用の治療薬、三環系抗うつ薬、またはオピオイドなどが使用されることがあります。これらの治療法は、神経の痛みを軽減するために用いられ、医師が症状に合わせて適切な薬を選んで処方します。

 以上のように、帯状疱疹の治療は、発症後すぐに適切な薬を使うことがとても大切です。じっとしていても痛かったり、原因のわからない痛みが体の片側に起こり、そこに発疹が出たら帯状疱疹が考えられます。もし、帯状疱疹と疑われるような痛みを伴う発疹や水ぶくれ、症状が治った後でも長引く痛みがある場合は、早めに医療機関を受診し、専門の医師の指示に従って治療を進めるようにしてください。皮膚症状がなくても気になる症状がある場合は、早めに相談しましょう。

岩手医科大学
皮膚科学講座

佐々木 夢希

■取材協力

岩手医科大学 >>

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