岩手医科大学附属病院内丸メディカルセンター駐車場横の薬局の裏にシックな佇まいの喫茶店「戸塚珈琲店」があります。

どこか懐かしさを感じる戸塚珈琲店は店主の戸塚佳孝さんと奥様の妃里さんの二人で今年の６月にオープン。店から溢れる焙煎されたコーヒー豆のほのかな香りが鼻をくすぐります。穏やかで物腰柔らかな戸塚さんは盛岡市出身で市内の自動車ディーラーに営業マンとして長年勤めていました。お客さんのために毎日奔走するうちに、もてなす形は他にもあるのではと考えるように。今とは逆のゆっくりで、寛げる空間で自分の好きなコーヒーでお客さんを出迎えたいと喫茶店を開く夢を抱きます。「独学でコーヒーの知識を深めるうちに、コーヒー好きの間では有名なネル（布）ドリップコーヒーが評判の大坊珈琲店を知り、気になって飲みにいきました。口に入れた瞬間の苦味が徐々に甘くなっていき最後の一滴まで楽しめる、まるでコーヒーのストーリーのようで感動しました。自分もそんなコーヒーを出したいと開店への思いが一層強くなりました」と本格的に開店準備をするため退職。修行のため老舗喫茶店で働き始めますが、焙煎などは感銘を受けた大坊珈琲店と同じ手回し焙煎とネルドリップで自分の味を作りたいと日々奮闘します。「表現したい味を出すため自分の五感で確かめながら焙煎できる手回し焙煎にこだわりました。各社のコーヒー豆の特徴を捉え、焙煎の具合でどう変わるか追求し飲み比べ続けました」と妃里さんと試飲を繰り返し試行錯誤の末、自分たちのコーヒーの物語を完成させました。

ネルドリップで丁寧に淹れられる一杯は、紙で濾すより油分が多いのでまろやか。手回しで焙煎した深煎りコーヒー豆が苦味の深さを感じさせます。鉄瓶で沸かしたお湯を使うので雑味がなく、よりマイルドになり妃里さんお手製のしっとり濃厚なチーズケーキを引き立てます。

奥深いコーヒーと心癒されるスイーツの物語はこれからも仲睦まじい戸塚夫妻によって語られていきます。