盛岡市浅岸の水道橋を渡り、くるみ幼稚園の方に曲がると見える「おやつ舎Laughter」と書かれた小さな看板。その奥にはパンの香ばしい香りが漂う一軒の店があり、扉を開けると店主の岩根理恵子さんが笑顔で出迎えてくれます。

岩根さんはドラマやバラエティが好きで中学・高校は演劇部に所属。「自分の演技で笑ってもらうのが嬉しかったです」と笑顔にする喜びを知ったそう。高校を卒業し映像の勉強をするため山形県の美術大学に進学、作品作りに励みます。卒業後は東京の映像制作会社に就職しますが理想と違い会話も少なく働き詰めだったそう。「会社を辞め近くのパン屋で販売の仕事を始めました。楽しく過ごしていましたが心には盛岡の風景があり、失恋し帰ってきて岩手山や中津川の風景に癒されました」と盛岡の良さを改めて感じ盛岡らしい場所にお店を出したいと思うように。ほどなくして結婚し盛岡を離れることになった岩根さん。来客が多く、遠くまで来てくれたからとお手製のパンや菓子を振る舞っていると食べた人からおいしいと何度も言ってもらい嬉しかったと言います。

数年後、離婚を機に浅岸へ戻ることに。悲しいけどこれはチャンスだと前向きに捉えた岩根さんはこれからどうしようかと考えます。「パンやお菓子作りをしてきて自分にはそれしかないと思った。盛岡を感じられるお店をやりたいという夢を叶えるなら今しかない」と喫茶店開店を決めます。家族や近所の人、多くの人に支えてもらいながら店づくりやメニュー考案など奮闘。その恩をおいしさで返したいと教室に通いパンやお菓子の作り方を学び、素材にこだわって作るように。紆余曲折しながらも8月8日、笑いの日のオープンにこぎつけました。

大好評のパンは国産の小麦粉とバターを使い時間をかけて発酵させるので生地のうま味が増しほのかに甘く絶品。あんみつのあんこは国産小豆をブレンドされた砂糖で4時間かけて煮るので奥深く素朴な味わい、同じ器に載るミルクプリンは生クリームが濃厚でまろやかな甘さが絶妙です。

素材と作り方にこだわったメニューを食べた人からは自然と笑みが溢れます。