【兎森山(うさぎもりやま) 1054m】跳び箱飛びでピョン

【兎森山(うさぎもりやま) 1054m】跳び箱飛びでピョン

ほくほくトレッキング
阿部陽子のほくほくトレッキング
(公社)日本山岳会岩手支部 支部長 阿部陽子さん

 新雪にウサギの足跡が刻印されている。前後にずらした小さな穴は前足、左右に力強くひらいた窪みが後ろ脚。「ウサギはどっちの方向に進んだでしょう」と聞かれたが、いかんせん跳ぶ態勢を目撃したことはない。

「跳び箱飛びで前進する」と聞いて納得、ウサギは前足を箱に着いて全身を送りだしてから着地する。ならば答えは「後ろ脚の方向に進む」だ。

 夏油高原スキー場の北端に「兎森山」はある。西和賀町と北上市の山岳エリアは、標高1000mを超す稜線が連なった深山で、小動物を捕食する獣が潜む。例えばキツネ、イタチやテン、上空から猛禽(もうきん)類が狙うため一瞬たりとも油断できない。だが、目晦(めくら)まし行動に長けたウサギは、天敵を躱(かわ)す強(したた)かな知恵者なのだ。素早いジャンピングや瞬時の方向転換で行方をくらまし、時には落とし穴へ潜るなど、鋭い感知機能と軽業を駆使して身を守る。

 兎森山の登山口は、スキー場手前で右折した鈴鴨林道の1㎞先標高665m点にある。最初は林間を進み、標高740mでゲレンデに飛び出す。振り返りざまに見た巨大なオガラ森に目をみはる。ゲレンデの端っこを標高950mのリフト降り口下方まで登り、再び林間の斜面にとりつけば、一頭足で山頂だ。

 三角定規のように尖った頂は狭いながらも展望良好で、オール岩手を独り占めできる。北に早池峰山と岩手山を遠望し、すぐ目の前にオガラ森と前塚見山。西方に鷲合森・牛形山・焼石岳・経塚山と、奥羽の脊梁(せきりょう)がずらっと居並ぶ。光りに燃え、月光に冷める大地。スノーシュー歩行よし、スキー登降よし、冬こそ登っておきたい兎森山である。

 2023年は卯年。跳び箱飛びでピョンピョン躍進したいところだが、速足は禁物。カメが一等賞だった。山登りはカメ歩きでゆるりと参りましょう。

兎森山
まるでロケット発射台のようにみえる兎森山。月旅行は満月の夜、ウサギは餅をついて地上に舞いもどる

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