【七ツ森(ななつもり)348.4m】七つの森が未来を包む

【七ツ森(ななつもり)348.4m】七つの森が未来を包む

ほくほくトレッキング
阿部陽子のほくほくトレッキング
(公社)日本山岳会岩手支部 支部長 阿部陽子さん

 七つの森に守られた学校がある。雫石町繋(つなぎ)十文字交差点の西にある七ツ森小学校だ。森と森が囲んだ小さな空間に、校舎も校庭も校門もスッポリおさまっている。校舎の横は単純なゆるいスロープになっており、雪が積もれば即スキー場に変身だ。リフトやハウスはないけれど、子らが滑るゲレンデとして申し分ない。

 朝6時、辺りは薄青く静まり返っている。けれど、朝陽がすりすり射すころにはいつもの活気をとりもどす。森と小学校が織りなすお伽噺(とぎばなし)のような美しい情景に引きこまれる。

 七ツ森は、見立森(三手ノ森)(みてのもり)・三角森(みかどもり)・勘十郎森・鉢森・稗糠森(ひえぬかもり)・石倉森・生森(おおもり)の総称である。南の国道46号を挟んだ塩ヶ森と松森山も含め、私はチーム七ツ森と自己流に数えたりしている。皆どんぐりの背比べの低山だが、どの森も個性豊かだ。

 例えば勘十郎森。昭和40年式の地形図は、「小鉢森山」と記載していたが、何時どんな訳で山名が置き換わったのか、皆目わからない。「そもそも勘十郎さんって、どんな人?」

 それに見立森は、1956年に完成した御所ダムの原石を採取したため、山体が大きくえぐられ、リハビリテーションセンターが建つ敷地になった。

 主峰の生森は標高348m、山頂の眺望が素晴らしい。西の秋田駒ヶ岳と東の岩手山の間は直線距離にして約20㎞ある。横一直線に並ぶ奥羽の秀峰と、雫石・網張・岩手高原のスキー場が織りなす光景は、まるで巨大絵巻だ。誰もが美しい雫石盆地の虜になるだろう。賢治が愛した七ツ森は、イーハトーブの風景地に選ばれた。

 国有林だった七つの森は、明治42年に雫石の町有林となって以来、赤松を植林し、小学校の校舎を建てる材に活用したという。 「あ~、子らのように毎日、七ツ森小学校で学びたい」。七つの森が未来を包む。

七ツ森
左から鉄塔がある生森、緑濃い石倉森と鉢森、伐採がすすむ勘十郎森と見立森がずらり…雪の岩手山を背に壮観なり

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