【カモメ森山 (かもめもりやま) 324.8m】気分は渡り鳥

【カモメ森山 (かもめもりやま) 324.8m】気分は渡り鳥

ほくほくトレッキング
阿部陽子のほくほくトレッキング
(公社)日本山岳会岩手支部 支部長 阿部陽子さん

 岸壁でイワシを釣った。「一匹ちょうだい、ミャーオ」と、隙あれば横取りしようと付きまとう。体つきが大ぶりで目つきが鋭いようすから、年中みかける留鳥のウミネコであろう。一方、カモメは極寒のシベリアを避けて秋に飛来する渡り鳥である。

 箱崎半島の真ん中にカモメ森山という森がある。大槌湾と両石湾を分ける箱崎半島は、海に突きだす刀剣のようであり、ワニの鼻のようでもあり、鳥が俯瞰すれば一目瞭然である。それに、「不漁でも三貫目(約12㎏)は捕れる」という三貫島がすぐ南にあるなど、渡り鳥ならこれほど条件のいい越冬地は見逃すはずがない。

 箱崎半島は渡り鳥の別天地である。私が「幸せの青い鳥」オオルリを初めて見た場所も、「焼酎いっぱいグイー」と鳴く小さなセンダイムシクイを覚えたのも、カモメ森山であった。もし、目印が大型猛禽類のオジロワシ山とかミサゴ岳なら、小鳥は飲み込まれそうでおちおち飛んで来られまい。「カモメが翔んだ」というヒット曲があるけれど、工夫のしどころはカモメの親しみやすさにありそうだ。

 白浜漁港から海岸沿いの林道を3.3㎞、大鳥居の前の広場に駐車する。標柱「大沢貝塚」がカモメ森山への登山口だ。植林帯を抜けると鳥居の奥に小さな祠と権現さま二つを祀る一ノ内権現神社に着く。これより尾根を歩いて山頂へ。樹林に囲まれた二等三角点が登山者を待っていた。

 いったん、駐車場に下る。大鳥居をくぐり、林道をアップダウンしながら3.9㎞進み、半島の先端まで足を伸ばす。連なった赤い鳥居をくぐれば御箱崎神社だ。眼下の岩礁帯は花崗岩の千畳敷。半島の最先端は無人の白い灯台である。

 紺碧の海原に鋭く突きでた箱崎半島は、東端まで見所が満載だ。気分は渡り鳥。ときどき飛来したくなる。

箱崎半島
大槌湾の蓬莱島から望む箱崎半島。鳥のように飛ばずともよい、東端まで快適な路を歩く

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