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人生100年時代到来
「きんは100歳100歳」、「ぎんも100歳100歳」。このフレーズ、懐かしく思い出される方も多いのではないでしょうか。1992年に放映されたダスキン社のコマーシャルがきっかけで、100歳の双子姉妹「きんさん・ぎんさん」は一躍国民的な存在となりました。先日、NHKの番組「時をかけるテレビ〜今こそ見たい!この1本〜 きんさんぎんさん 100歳の時間(とき)」を視聴し、当時の微笑ましい姿を振り返ることができました。
二人は日課の散歩を欠かさず、身の回りのことは自分でこなし、ユーモアに満ちた軽妙なお話で多くの人々を魅了しました。その愛らしい姿は100歳という年齢に対する固定観念を大きく覆しました。きんさん・ぎんさんの時代、国内の100歳以上の人口は約5,000人。それが2024年現在95,000人を超え(厚生労働省)、まさに人生100年時代が到来したことを実感させられます。
健康寿命100歳を達成する秘訣とは
キューサイ株式会社の「100歳まで楽しく歩こう」プロジェクトでは、100歳以上の方々100人へのアンケートが実施され、結果から長寿の秘訣が見えてきました。その中で最初に挙げられたのは、「好き嫌いなく、三食をきちんと食べ、野菜を多く取る」という食習慣でした。調査によれば、回答者の約90%以上が卵や豆腐、牛乳、白身魚などタンパク質をしっかりと摂取し、約80%がたっぷりの野菜を食べているとのこと。そして、約80%以上の方が「誰かと一緒に食事をしている」と答えています。
また、元気な100歳の3人に1人は自分の歯を残しており、あの「ぎんさん」も5本の自分の歯を誇らしげに語っていたそうです。たとえ総入れ歯であっても、肉をしっかり噛み切れる方は約60%、そして半数以上がかかりつけの歯科医を持ち、口腔内の健康を維持しているのです。
さらに、良質な睡眠(9時間以上)、1日30分以上の適度な運動、趣味への没頭、身の回りのことを自分でこなすこと、そして家族や地域社会との交流を楽しむことが重要だとされています。特に、周囲の人々への感謝や思いやりを忘れず、笑顔で積極的な日々を送る姿勢が、健康長寿を支える原動力となっているのです。
幸福長寿という考え方
生まれてから亡くなるまでの「平均寿命」に対して、「健康寿命」は健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる期間とされます。そして、コロナ窩を経て「幸福寿命」という考え方が脚光を浴びるようになりました。健康は単に身体的に病気がない状態ではなく、精神的、社会的、経済的、環境的にも良好な状態によって得られるものであり、幸せで生きがいを感じられる期間「幸福寿命」を長く保つ「幸福長寿」を目指そうという考え方が拡がってきているのです。
幸福学の第一人者である慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は、幸福を構成する4つの要素を次のように挙げています。
① やってみよう因子:自己実現と成長(やりがいや強み、目標を持ち、主体性が高い人は幸せ)
② ありがとう因子:つながりと感謝(つながりや感謝、利他性や思いやりを持つことが幸せ)
③ なんとかなる因子:前向きと楽観(前向きかつ楽観的で、なんとかなるというポジティブな人は幸せ、チャレンジ精神が大事)
④ ありのまま因子:独立と自分らしさ(自分と他者を比べ過ぎず、しっかりとした自分らしさ持っている人は幸せ)
これらの因子を高めることが幸せにつながるというのです。さらに生きがいを感じられる地域社会への参加や貢献、守り・守られる住みやすい地域コミュニティを作っていくことも「幸福長寿」の実現のために重要なことです。
人生会議(ACP)のすすめ
2024年『本屋大賞』を受賞した『成瀬は天下を取りに行く』の主人公・成瀬あかりは、200歳まで生きることを目標に掲げていました。突飛な発想と行動ながら人を惹きつける真っ直ぐな生き方は、私たちには真似はできませんが、それでも100歳まで生きることなら十分可能な時代になりつつあります。しかし、それでも、自分の意思を伝えられなくなる時、お別れの時は、いつか必ずやってきます。
自分らしさを保ちながら最期まで生きるために、そして残される家族や大切な人々に不安や後悔を抱かせないために、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)すなわち「人生会議」で備えておきたいものです。あなたが大切にしている価値観や希望する医療・ケアについて、家族やかかりつけ医などと話し合い、共有するための人生会議は、「将来の自分」と「残される人たち」への思いやりにほかなりません。特別なことではなく、誰にとっても必要なことなのです。ときには「人生会議をしてみよう」と気軽に言い合えたらすてきですね。
自分自身の人生を楽しみ、健康長寿と幸福長寿を実現するためのさまざまな“秘訣”、そして“人生会議”を「想活」として取り組んでみてはいかがでしょう。
出典:キューサイ株式会社.【100歳100人 実態調査 2021】コロナ禍でも変わらない長寿の秘訣元気な100歳以上の85%は9時間以上睡眠! 良い眠りのための工夫に「運動」と「環境」づくり また 長引くコロナ禍で3割近くがデジタル機器も駆使して交流!?.「100歳まで楽しく歩こうプロジェクト」.2021.09.15.https://corporate.kyusai.co.jp/news/detail.php?p=5547.2024.11.18、キューサイ株式会社.【100歳100人 実態調査 2019】約9割の食事で卵・豆腐などの「たんぱく質」をしっかりと摂取 ~100人の3日間の食事900食を分析~「100歳まで楽しく歩こうプロジェクト」.2019.11.11.https://corporate.kyusai.co.jp/news/detail.php?p=2756.2024.11.18
内丸メディカルセンターから
高度外来機能病院として 地域に密着した役割を担います。
内丸MCでは、矢巾の附属病院(本院)との密接な連携のもと、医科21科による高度専門外来を行っております。また、どこを受診したらよいかわからない患者さんも受診できるよう総合診療外来も設置し、プライマリ・ケアにも力を入れております。歯科医療センターでは、高度な診断、治療提供体制を備えながら地域に密着した歯科医療を提供しております。内丸MCは、専門性と利便性を兼ね備えた新しいスタイルの地域医療拠点施設です。
記事監修
岩手医科大学医学部 総合診療医学講座教授 岩手医科大学附属内丸メディカルセンター センター長
下沖 収 先生