思いを込めた灯を

思いを込めた灯を

インタビュー
湊盛海さん、由美子さんご夫妻
湊 盛海 さん
(78)
湊 由美子 さん
(75)

●地域活動の大切さ

 昨夏行われた、滝沢市牧野林中央自治会による「夢灯り」。地区の公園で開催され、地域住民や子どもたちが牛乳パックで作った約150個の灯篭に明かりが灯されました。その灯篭作りを中心となって行ったのが、湊盛海(みなと もりみ)さんと由美子(ゆみこ)さんご夫妻。宮古市田老地区の夢あかりで飾られる黒く、色鮮やかな光が溢れる灯篭の作り方を由美子さんが習い受けたのが始まりだったと話します。

 宮古市出身の由美子さんは消防士の盛海さんと出会い、結婚と同時に盛海さんの故郷である山田町へ移住。義父と義母、二人の子どもに囲まれ、にぎやかな毎日を過ごしていました。「子どもたちが大きくなって、自分の時間ができたのでずっとやりたかった紙粘土細工を始めることにしました」とセミナーを受講した由美子さん。本や道具も買い、作品作りを楽しんでいました。その後、盛海さんも退職を迎え自分の時間が持てるように。「自治会の防災部に入ることになって、津波に備えて避難訓練を行いました」と消防士だった盛海さんの防災知識と経験を一生懸命に伝えたと言います。そんなある日、抜きうちの夜間訓練が実施され、その4日後、東日本大震災が発災します。「訓練をしていて、普段お父さん(盛海さん)から言われていたから訓練通りに動くことができました」と振り返る由美子さん。そして、自宅には屋根を覆うほどの大きい津波が−。しかし、盛海さんが地域のためにと熱心に行った避難訓練のおかげで助かった人も多く、地域活動の大切さを実感したと話します。

●思いをつなぐ夢灯り

 その後、滝沢市に移り、現在の住まいに落ち着いた湊さんご夫妻。慣れない地域の生活にもなじみ始めた頃、思い出のものを見つけます。「もりおか歴史文化館で行われた、3・11‌の復興祈願の『祈りの灯火』の点灯式に参加した時にこの灯篭を見つけました。自分の手で作ってみたいと思っていたので、再会できて感動しました」と震災前のことを思い出し、今度こそ灯篭を作ろうと思った由美子さん。事情を話し夢灯りや灯篭の関係者に連絡をすると、灯篭の発案者が田老の人だと教えてもらいます。「その先生に辿りつくのもまた大変で。情報を集めて、なんとか連絡が取れるようになりました。電話すると、作り方を教えてもらえることになったので、何度かご自宅にお邪魔しました。灯篭用の絵の原画のコピーをもらったり、先生のきれいな作品も見せてもらって勉強になりました」と早速アドバイス通りに作り始めた由美子さん。押し花や雑貨作りをずっと続けていたため、灯篭作りも楽しみながら行い、細やかで洗練された灯篭を数多く作り上げました。

 丹精込めて灯篭を作る由美子さん。その灯篭を見た盛海さんからの勧めで、地域の集会所で展示をしてみることに。「自治会の会長さんに声をかけて、母さん(由美子さん)の灯篭を見てもらったら、ぜひ、夢灯りを自治会の行事に取り入れたいと言われました」と盛海さん。「子ども会や地域住民の皆さんに参加してもらって灯篭作りの講座をやりました。子どもも大人も楽しそうでした」と作り方を指南した由美子さん。多くの人に楽しく参加してほしいと本やチラシから合いそうな絵柄を探し出し、灯篭用に原画を準備していると言います。こうして地域で力を合わせた夢灯りを開催。毎年行うことになり、年々、参加者や灯篭の数も増え、住民憩いの場である中央公園で行うように。みんなで作った灯篭に一斉に明かりが点灯されると歓声が上がったと言います。 「少しでも地域の役に立ちたいと思い自治会の活動を長年、頑張ってきました。もうできないと思っていた夢灯りの灯篭作りや押し花などの制作も人つながりで続けられました。震災の時は大変だったけどマイナスなことばかりではないんだなと感じています」と盛海さんと由美子さん。自治会の夢灯りは今年も開催予定。二人が思いを込めて作る灯篭にはずっと明かりが灯されていくでしょう。

プロフィール

1946年生まれ 山田町出身(盛海さん)、1949年生まれ 宮古市出身(由美子さん)。結婚を機に山田町で暮らすようになり、東日本大震災で被災し滝沢市に移住する。地域の役に立ちたいと自治会に参加し、盛海さんは副会長など7つの役を務める。由美子さんは趣味の押し花で栞などのアート作品作りを楽しんでいる

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