より優しく、より強い盛岡

より優しく、より強い盛岡

インタビュー
盛岡市長 内舘 茂さん
盛岡市長
内舘 茂 さん
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● 声を聞き共に動く 協働のまちづくり

 若者の流出、地域社会の活力低下などさまざまな課題を抱える盛岡市。新たな総合計画(2025〜34年度)に沿った施策に取り組んでいます。「たくさんの思いがあって市長になりました。取り巻く環境は非常に厳しいけれども、市民の皆さんとの約束の中で進んでいることや取り組んでいることを伝えたい」と話す内舘茂市長。これまでの取り組みと盛岡市の将来像についてお聞きしました。

 これからのまちづくりは「共に」がテーマだと内舘市長は強調します。「より優しく、より強い盛岡」をビジョンに、年齢・性別・障害の有無を超えて誰一人取り残さない「優しい盛岡」を実現するため、地元の経済が元気で明るい「強い盛岡」をすべての市民と共に創っていくと語ります。

 そんな第一歩として、就任直後に取り組んだのが「こども相談室」の開設。「家族にも先生にも相談できずに一人で悩んでいる子どもたちの力になりたいという一心で設置しました」と話します。今年2月には24時間365日対応のチャット相談を導入し、より手厚く子どもたちの悩みに寄り添う体制を整えました。

 また、市長と市民が直接顔を合わせて話す「まちづくり懇談会」や「『もりもり』〜市長と語ろう!もりおか盛り上げ座談会〜」を企画し、年間100回のペースで市民と膝を交えて対話を重ねてきました。「町内会でもできることがあれば協力したいという声が出たり、今までライバルだった商店街が協力し始めたり、まちを共に創っていくんだという主体性を感じています」と手応えを語ります。人口減、財政難など厳しい状況の中、市民の意識も変化し「協働」の気運が醸成されつつあるようです。

 こうして市民と共に力を合わせることを軸に、盛岡市では34年度までの10年間で「輝きが増し 活力に満ち 夢をかなえるまち盛岡」の実現を目指します。「先輩方が生み出し、継承してきた盛岡の伝統や文化などの『輝き』にさらに磨きをかけ、地元の企業を元気にして『活力』をもたらし、市民みんなが『夢』をかなえることのできるまちを、すべての市民と共に目指します」と内舘市長。さらには、人口減少対策に重点を置いた『未来創造プロジェクト』を立ち上げ、社会減対策「働きたい・住み続けたい・行ってみたいまち創造プロジェクト」と自然減対策「夢を持ち喜びを感じられる子育て応援プロジェクト」の2本柱で、人口減少の緩和と抑制を進めるとしています。

●柔軟な横の連携で 掛け算のまちづくり

「これからのまちづくりは、まち全体を経営するという視点が求められます」と話す内舘市長。事業を通じて地域や社会に貢献する企業が選ばれる時代に、市民と協働のまちづくりを推し進めるためには「足し算」から「掛け算」への転換が必要だと続けます。「市役所だけ、事業者だけではどんなに頑張っても足し算にしかなりませんが、組織を越えて協力することで成果は2倍にも3倍にもなります。産学官民も市役所内も組織を横断して連携する『掛け算のまちづくり』でより大きな成果をあげたい」と意欲を示します。

 このような取り組みが少しずつ形になり、100人規模の雇用につながる企業の誘致をはじめ、働く場の創出が着々と進んでいます。「これからさまざまな施策が形になっていくので注目してほしい。そして、私自身の起業経験を活かし、セミナーなどを通じて若者のハートに火をつけ、起業への挑戦を後押ししたい」と目を輝かせました。

 最後にシニア世代への思いについて、「このまちを創ってきた先輩方への感謝と敬意を忘れず、IT化やAI導入により生産性を上げることで窓口など対面の対応を充実させ、誰一人取り残さない行政サービスを提供していきたい」と内舘市長。市民アンケートによると「盛岡が好き」と回答した市民の割合は79‌・1%。「これこそが盛岡の強みであり、希望です。私も起きている時間はずっと盛岡のことを考えているくらい盛岡が好きです。盛岡のために仕事ができることが幸せです。27万8098人(令和7年8月1日現在)すべての市民と共に、盛岡に合ったまちづくりを進めていきます」と力強く締めくくりました。私たちがまちのためにできることを考えることが、未来の輝きにつながるのかもしれません。

プロフィール

1966年、盛岡市生まれ。学習院大学卒業後TOTO株式会社に入社、同期入社の奥さまと出会う。1993年に家業の丸乃タイル株式会社(現 株式会社マルノ)入社、2003年に代表取締役就任。2006年、株式会社理創生活設立、代表取締役就任。2023年9月、盛岡市長就任。毎日1万歩のウオーキングと筋トレ、時には自分で弁当を作り健康を管理。3度目の市長選出馬の際に奥さまと交わした約束を守り、週3回のゴミ出しと米・牛乳の買い出しを続けている。座右の銘は「動機善なりや私心なかりしか」

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