前回は更年期の一般的な特徴についてお話ししました。今回は心理的背景と症状についてお話しします。
更年期は、心身にさまざまな変化が現れる時期です。変化に関わる背景として、次のような事柄があります。
【役割や活動の変化・喪失】
子育てが一段落し、職場や地域での役割も少しずつ変わっていきます。子どもの自立や、夫の退職、親や親しい友人の病気・逝去など「これから自分は何をしたらいいのか」と不安に感じることがあります。
【身体的変化による自己変容】
髪のツヤや皮膚の弾力が衰え、体型の変化が目に見えてくると若い頃の自分と比べてしまうことで自己肯定感が低下しやすくなります。
【老いの自覚と将来の不安】
体力や気力の衰え、不眠、慢性的な疲労感などを実感すると「自分ももう限界なのでは」と心配になることがあります。
これらの心理的背景を強く意識すると「昔はもっと元気だったな…」、「どうして今こんなことになってしまったのだろう…」といった抑うつ的な思考に陥ります(図参照)。

さらに、女性ホルモンの低下に伴う身体的な症状が加わることで、日常生活に支障を来たす場合が「更年期障害」となります。代表的な症状に次のようなものがあります。
【骨・関節】 骨密度の低下による骨粗しょう症(骨がもろく、骨折しやすくなる)
【循環器】 動脈硬化の進行による高血圧、心筋梗塞、狭心症など
【泌尿・生殖器】 骨盤底筋の緩みからくる子宮脱(骨盤臓器脱)、尿失禁(咳やくしゃみで漏れる)
【神経・精神】 物忘れや注意力低下(認知機能の衰え)、不安感、イライラ、無気力
【代謝】 体重増加(20歳代に比べ約20kg増)、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム
更年期の症状は個人差が大きく、軽度であれば生活習慣の改善や軽い運動、リラックス法の導入で軽快することがあります。まずはかかりつけの産婦人科や女性ヘルスケア外来で、ご自身の症状やライフスタイルに合わせた最適なケアについて相談しましょう。
岩手医科大学
産婦人科
小山 理恵
■取材協力