住田町・遠野市・奥州市にまたがる種山ヶ原は、標高871mの物見山を頂点に、西側の大森山820mなど標高700m前後の丘を累々と連ねる高原である。南北11km東西20kmの大草原をぐるりと見渡せば、北に早池峰や六角牛、五葉山と愛染山が見え、西は住田牧場を囲むように貞任山・男火山・女火山だ。さらに北北西80㎞の岩手山がスカ~ッと浮いて清々しい。

物見山の一等三角点は点名「種山」、すぐ近くにレーダー雨雪量観測所の白い建物が建つ。気象が目まぐるしく変わる種山ヶ原は、まるで巨大なコウモリ傘のようにたおやかで、上空をわたる風は霧と雲をかく乱するばかりだ。草原に降った雨や雪は、幾つもの沢や谷を流れ下って北上川となり、東へ分かれて太平洋にそそぐ。
「ひょっとして岩手山から種山ヶ原の『白い建物』が、見えるかもしれない」と呟いたことがあった。それから数年後、IBCの収録で岩手山に登ったおりに双眼鏡の入った浅見アナウンサーのザックをのぞいて私はピンときた。どうやら彼は、岩手山から見える種山の『白い一点』を確かめたかったらしい。が、いくらなんでも80kmは遠すぎる。
種山ヶ原は賢治の聖地である。およそ100年前の1924年、賢治はドヴォルザークの交響曲第九番「新世界より」のメロディーに、「四月はかぜのかぐわしき…」と歌詞をつけた。そして「種山ヶ原の夜」の戯曲で、人間だけではなく楢・柏・樺など樹木もまた自然の構成員であると語っている。
道の駅の筋向いより右手に進み、駐車場から広場と広場をつなぐ小路をたどる。また、左手の舗装道より風の又三郎の像がある星座の森で駐車した場合は、山頂を目指して大風景のど真ん中を一直線に歩く。風に舞う賢治が語りかけてくる。
海だべがど おら おも たれば やっぱり光る山だたぢゃい ホウ




