● 花巻温泉から花巻の観光協会へ
岩手県のほぼ中央に位置し、空港を含む交通インフラを兼ね備えている花巻市。歴史文化や食の宝庫としても有名で、古くから東北の宿泊拠点としても親しまれています。最近では、世界で活躍する野球選手も輩出し、注目が集まる花巻市ですが、中心的産業と言えば観光業。今回は、そんな観光を担う花巻観光協会の専務理事の佐々木豊さんにお話を伺いました。
実は、佐々木さんは今年就任したばかりの逸材。前職は花巻温泉株式会社専務取締役として47年間、観光産業を見続けてきた経験から花巻の観光に一石を投じれるのではないかとの思いで着任されたとか。
「まず花巻観光協会が何を行っているのか一部紹介したいと思いますが、取り組みのひとつに観光町づくりがあります。『企画・誘致・物産』の観点から370を超える会員や市民の声を集約して行政と連携。そこから教育旅行、物産品開発、PRなどさまざまな地域活性化活動につなげています」と佐々木さん。しかし、時代の変化と共に観光形態も変化を迫られていると話します。
「昔は新幹線開通や花巻空港のジェット化など高速交通と大量輸送の波から、団体旅行の観光拠点として賑わいました。しかし、近年では個人観光がメイン。移動ひとつ取っても個人だと観光地までのアクセスも大変で観光施設を周遊するバスなどの二次交通の整備なども課題の一つです」。
今までの経験を元に、課題に真剣に取り組む佐々木さん。この役を引き受けるにあたりきっかけがあったといいます。
● 旅行で感じた郷土愛 観光で新たな価値を
今年の冬に花巻温泉を定年退職した佐々木さん。退職を機にここぞと、現役時代にはなかなか行けなかった家族旅行を企画します。しかし、行く先々目につくのはサービスの一つひとつ。さらには、故郷・花巻と比べることばかりだったとか。
「家族と楽しみにいったはずが、接遇や環境づくりにどうしても目がいってしまい、気づいたら声をかけていました。京都に行った時には外国人に案内される国内旅行に驚き、出来事の一つひとつ花巻だったらこうするなど考えていました」と苦笑い。
しかし、旅先では地元の方がみんな笑顔でそこの土地の風土や観光を親切に教えてくれ、そのことに感銘を受けたといいます。同じことを自分が観光ボランティアとしてできないだろうかと「観光」自体に興味を強く持ち始めた佐々木さん。なんとそのタイミングに協会から声をかけられ、これも縁だろうと専務理事着任を了承。旅館業で培った経験を元に、地域を活性化しようと意気込みます。
「方向性のひとつとして交流人口による地域経済活性化が目標です。観光庁事業で採択された、温泉郷の地域計画で温泉施設が大きく改修されることも交流人口の向上につながると考えます。市内にはたくさんの観光資源があります。歴史、文化、祭り、農業観光など点在する魅力的な観光資源が、高い集客力をもつ宿泊拠点とつながることで観光客の滞在時間が長くなる。自分たちも気づいていない潜在的な観光要素を発掘していくことでより交差的な観光へとつなげたいと考えます。後は、私が旅先で出会った地元の方々のように花巻に住む誰もが笑顔で旅行客に地域の情報などを話せる町づくりができたらいいなと思っています。ここからは地域への恩返しです」旅館の発展を願い邁進した佐々木さん。今後は観光による地域の活力を邁進していきます。
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