前回、嚥下障害の機序について掲載いたしましたが、どのような場合に嚥下障害と考えれば良いのでしょうか。下記のチェックポイントに複数個該当するようであれば、嚥下障害の可能性があります。まず自分でチェックしてみましょう。
- 呼吸が苦しい。呼吸数が増える。
- 飲み込み時に上を向く。
- 口から食べ物がこぼれる。
- 飲食物が鼻から出てくる。
- 口の中にいつまでも食べ物がたまる。
- 食べ物が逆流してくる。
- 飲み込むと違和感や痛みがある。
- 食事で疲れる。時間がかかる。
- 痰が増える。
- よだれが多い。
次に嚥下障害の予防策をご紹介します。
嚥下障害の知覚面での対策として、少量の刺激物の摂取(氷片をなめる、トウガラシ、ワサビ、からしなどを食べる)が挙げられます。
運動面では、シャキア法(仰向けで肩を床につけたまま、頭だけをつま先が見えるまでできるだけ高く上げ、1分間保持し1分間休むことを3回繰り返す)、おでこ体操(手で額を押しつけて、喉仏のあたりを意識しながら、あごを引き筋肉を鍛える。5秒1セットとして5セットを目標に)、舌抵抗訓練(スプーンや指などを10秒程度舌に押しつけることにより舌の動く範囲と筋力を同時に改善する方法。5~10回を1セットとし、1日3~5セットを行う)などが効果的と言われています。
食事としては、一番むせにくいものはゼリー状のもの、シチューなどのとろみのついたものと言われており、水が一番むせやすいとされています。思い当たるものがあれば、まずはできることから開始してください。
岩手医科大学医学部
耳鼻咽喉科頭頸部 外科学講座
阿部俊彦
■取材協力