ノーベル文学賞を受賞した川端康成(かわばた やすなり)の初恋の人、伊藤初代(いとう はつよ)は奥州市岩谷堂生まれの人です。川端は1899(明治32)年6月14日大阪に生まれますが、東京帝大在学中に初代と出会います。川端が21歳のころです。初代は14歳で東京の「カフェ・エラン」で働いていました。川端はたちまち初代に夢中になります。1921(大正10)年、後に作家となる学友の鈴木彦次郎ら3人の学友を伴い、岩谷堂小学校で用務員をしている父・忠吉を訪ねています。結婚の承諾を得るためでした。
とはいえ、この恋は実りませんでした。川端は作家として大成しますが、作品に少女初代の心象が色濃く投影されていると彦次郎は指摘しています。
1974(昭和49)年6月15日、初代の生家近くにある岩谷堂の向山公園に川端康成文学碑が建立されました。社団法人江刺文化懇話会が約150万円をかけて建てたもので、石碑には川端康成研究家の長谷川泉が揮毫(きごう)した「川端康成 ゆかりの地」の文字が刻まれています。除幕式には彦次郎ら文学関係者のほか、初代の妹伊藤マキ、初代の三男桜井靖郎ら約200人が集まった、と岩手日報は伝えています。