MCT(中鎖脂肪酸)とは ―医療の現場では50年ほど前から使用―

MCT(中鎖脂肪酸)とは ―医療の現場では50年ほど前から使用―

健康食
正しい知識で食べて元気に 健康食
管理栄養士 菊池洋子さん

 楽しいリズムで歌う「M(めっちゃ)C(からだに)T(トレビアン)」。某メーカーのコマーシャルです。「MCT(中鎖脂肪酸)」は、医療の現場では50年ほど前から使用されていましたが、再び話題を集めるようになりました。今回は、「MCT(中鎖脂肪酸)」を取り上げたいと思います。

MCT(中鎖脂肪酸)とは

「MCT(中鎖脂肪酸)」とは、ココナツ油などに含まれる中鎖脂肪酸が100‌%‌の物をMCT(Medium Chain Triglyceride)と言い、液状と粉末のものがあります。

 菜種油、魚の油、ラード、バターなどの油脂・中性脂肪は、グリセリンと「脂肪酸」でできています。その「脂肪酸」は、炭素(C)が鎖状につながった形をしており、炭素の鎖の長さ(短鎖・中鎖・長鎖)や結合の違いにより分類されます。

 炭素の鎖の数が8〜12個のものが中鎖脂肪酸で、ココナツ油、牛乳、母乳などに含まれます。一般的な油のオリーブ油、キャノーラ油、ラード、魚油などは炭素の鎖の数が14個以上で長鎖脂肪酸と言います。

消化・吸収が早く、エネルギーになりやすい

 MCTは炭素の鎖の数が短いため、水に馴染みやすい特徴があります。そのため、糖質と同様に門脈から直接肝臓に取り込まれ、速やかに分解されてエネルギーとなります。一方、長鎖脂肪酸は水に溶けず、リンパ管や静脈を通って脂肪組織、筋肉、肝臓に取り込まれ、必要に応じてエネルギーに分解・貯蔵されます。MCTは長鎖脂肪酸より、5倍早く分解されると報告されています。

医療現場では50年前から使用

 MCTは水に溶けやすい、無味、無臭、料理や飲み物に加えやすい、効率良くエネルギーになりやすいなどの理由で、医療の現場では50年ほど前からエネルギーを十分に取りたい腎不全や未熟児、術後の患者さん、てんかん治療の患者さんなどを対象に使用されてきました。

新たな利用として

 近年、MCTは食が細くなった高齢者の栄養改善にも取り入れられています。食事量は増やさず、いつも飲んでいる牛乳やジュース、みそ汁、お粥などに混ぜることでエネルギーアップが可能です。飲み込みがうまくできない嚥下障害がある方には、液体をムース状にする誤嚥予防に役立つ製品もあります。また、MCTは消化吸収が早く、効率良く分解され、体脂肪として蓄積されにくいことから、ダイエットや運動時の持久力向上としての利用も広がりを見せています。

加熱は危険

 MCTは140℃くらいで煙がたったり、泡立ちます。そのため、キャノーラ油やオリーブ油などのように、揚げる、炒める調理には使用できません。ポテトサラダに混ぜる、コーヒーに入れるなどの方法で取るようにしましょう。少量の小さじ1杯から始め、慣れたら20〜30gくらい/日まで。取り過ぎは腹痛、下痢、胃もたれなどの原因になります。

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