本で希望を与える

本で希望を与える

インタビュー
株式会社 さわや書店 外商部 部長 栗澤 順一さん 株式会社 盛岡書房 代表取締役 高舘 美保子さん
株式会社 さわや書店 外商部 部長
栗澤 順一さん
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株式会社 盛岡書房 代表取締役
高舘 美保子さん
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● 本のまち盛岡で生まれたプロジェクト

 本を楽しむ文化が根強い盛岡市で、病気と戦う子どもたちに本で希望を与えたいと立ち上げられた「象と花」プロジェクトをご存知でしょうか。総務省の調査で一世帯あたりの書籍購入金額が全国で一位になるほど本好きが多い盛岡市で活動を始めたのは株式会社盛岡書房代表の高舘美保子さん。「仲間同士協力して子育てする象のようにみんなで子どもたちを育て、心の成長のために本をプレゼントしたいと、本を贈り物の象徴である花と捉えて『象と花』と名付けました」と読書家の高舘さんは、本で地域の人たちを結んでいきたいと活動を始めました。

● ページをめくる楽しさを伝えたい

 高舘さんが盛岡書房を株式会社として立ち上げようとしていた時、読み終え手放した本を別の人に届け、また次の新しい本を手にしてもらえるような“本の循環”ができれば読書の普及にもつなげられるのではと考えていました。せっかく寄付してもらった本を地域のために生かしたいと考えていると、病気で入院している子どもたちの話を耳にします。「岩手医科大学附属病院の看護科の先生からコロナ禍で長期入院している子どもたちと両親が面会できなかったり、心の発育が遅れ医療でケアできない部分があると聞き、これだと思いました」と高舘さん。幼い頃から本に親しんできた高舘さんは紙の本は五感が刺激され創造力が養われると実感しており、病室の子どもたちにも本から刺激を受け楽しんでもらいたいと願うように。そこで紹介してもらい出会った、さわや書店の栗澤さんにプロジェクトの話を持ちかけます。「ずっと盛岡を本のまちにしたいと思い、読書の普及や本に関心を持ってもらうにはどうしたらいいか考えていました。象と花の話をもらった時はぜひ協力させてほしいとお願いしました」と栗澤さん。ここからプロジェクトが始まります。

 盛岡信用金庫の協力で窓口に本の回収ボックスを設置し寄付してもらった本を盛岡書房で査定・販売。その資金をもとにさわや書店で子どもたちに合った本を選書し届ける「象と花」プロジェクトの仕組みを考案し実施することにしました。

● 本でつながる地域と人

 当初「象と花」はサイトやSNSなどでしか周知をしていなかったため、すぐには活動が浸透しませんでしたが徐々に人伝に広がり、寄付をしに何度も足を運んでくれる人、事務所に直接届けてくれる人、手紙と一緒に届けてくれる人がいて温かみを感じ嬉しかったと話します。「いろんな人の和が広がるのを感じて、良い活動だねと言ってもらえました」と高舘さん。その和は個人だけではなく企業にも広がり「協力できないか」と声をかけてもらうことも。こうして集まった本は三千冊ほどになり、一冊一冊丁寧に査定とクリーニングを盛岡書房で行い販売。その収益は栗澤さんと児童書専門の書店員と共に子どもたちのために選んだ本、53冊へと姿を変えました。

 活動が始まって約半年、ようやく闘病中の子どもたちに本を送る日を迎えます。「無菌病棟でなかなかプレゼントとかできなかったが、やっと子どもたちを喜ばせることができると保育士さんも喜んでいたのが印象的でした」と贈呈式を思い出す栗澤さん。「贈呈式後にテレビで声をあげて喜んでいる子どもたちを見てとても嬉しくなりました。今後は他の病院や貧困家庭の子どもたちにも贈れるようにして地域一丸となって子育てしていきたい」と意欲を燃やす高舘さん。「象と花」の物語はこれからも綴られていくでしょう。

展勝地さくら染めタオルハンカチ
展勝地さくら染めタオルハンカチ

経済産業大臣賞を受賞した「展勝地さくら染めタオルハンカチ」。染色されない特殊な糸で刺繍されているので桜の花が浮き出ているようで美しい

プロフィール

【栗澤 順一さん】 1972年生まれ、釜石市出身。岩手大学を卒業後、盛岡市内の広告代理店に入社。数年後に株式会社さわや書店に転職し、絵本の読み聞かせ会開催や空きスペースへの本の設置など読書普及活動に努める
【高舘 美保子さん】 1964年生まれ、葛巻町出身。入社したIT系企業でパソコンスクールのインストラクターを経験。障がい者のためのパソコンスクールを開催したのをきっかけに就労支援B型盛岡書房を立ち上げる

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