人と動物の共生を

人と動物の共生を

インタビュー
大学生ハンター
徳田 陽与 さん
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● 動物たちのためにできることは何か

 初夏目前、山にでかけたくなる季節です。しかし、昨年は熊による人身被害が過去最大となり、動物たちが田畑を荒らす被害も増加。山の餌不足やハンターの高齢化が要因といわれています。そんな野生動物と人が共生できる環境を築きたいと活動する徳田陽与さん。わな猟の免許を持ち、岩手大学農学部 森林科学科で自然環境や生態系の保全などを学ぶ若きハンターです。

 雫石町の緑が豊かな環境で生まれ育った徳田さん。外を駆け回ったり、やんちゃな幼少期を過ごしたと話します。「小学校のときは通学路に熊が出たり、校庭にカモシカが出たり野生動物が近くにいました」と身近な野生動物に興味を持ち、自然と動物好きに。「獣医」という夢を抱くようになりますが、中学生になると考えが変わってきます。「動物は好きなんですが、ペットと野生動物は違う、自分が興味あるのは野生動物のほうではないかと思うようになりました。それでも獣医という夢も捨てきれなかったです」と迷いが生まれます。高校へ進学し、本当に獣医の夢を追い続けていいか悩んでいると担任の先生から声をかけられます。「『野生動物に関わりたいならこの分野じゃないか』と岩手大学 森林科学科の存在を教えてもらいました。森林づくりや森で暮らす生物のことを学び、自然との共生を考えていく学科だと知って、この道に進もうと決めました」と気持ちが定まります。視点が変わり、野生動物との共生に関しても考えるようになった徳田さん。とても難しく複雑な問題だと感じます。「大学以外でもヒントがあるのではと思い、調べたら狩猟活動をしている人たちを知りました。父の知人に詳しい人がいて、ハンター育成研修会があると聞いたので参加することにしました」と狩猟の道へも歩み出します

● ハンターの世界へ飛び込む

 県や自治体のハンター育成研修会に参加することにした徳田さん。最初は狩猟に対して良いイメージがなかったと話します。「動物を殺して何が楽しいのだろうって思っていたのですが、自分の目で見てみないと分からないので参加しました。猟師の方から『お互いに住みやすい環境にするために狩猟でできることもある』と聞いて印象が変わりました。それから数が増えても動物たちに悪影響が出てしまうことを知り、害獣駆除の重要性にも気づきました」と発見が多く、意識が変わる大きいきっかけになりました。その後、自分も狩猟に携わりたいと18歳以上で取得できるわな猟の免許を取ることに。すでに第一志望の森林科学科への入学が決まり安心して免許の試験に臨んだと言います。「事前に講習会がありどんな罠があって、どう使うかなどを勉強しました。試験は1日がかりで、次の日には合格が分かって嬉しかったです」と高校3年生でわな猟の免許を取得。ハンターの仲間入りを果たしました。

 そして、昨年4月に雫石町の鳥獣被害対策実施隊へ入隊。大好きな雫石町に貢献できるようになったと感慨深くなり、活動にも力が入りました。「動物たちを追い払う作業や放獣するかどうかの対応の仕方など間近で見ることができて勉強になりました。そして活動しているとシカやイノシシ、熊などの被害が増えているように感じました」と現場を見る機会が増え、視野が広がったと話します。

 活動を通してさまざまな経験をした徳田さん。狩猟免許を持つ大学院の先輩や狩猟経験豊富な役場のベテラン職員など多くの人と出会い、狩猟の奥深さを知ったと言います。「畑を荒らされないように狩猟をする人や被害を広げないため管理目的でやっている人もいます。どの人も動物たちは山からの恵みだと感謝して最後まで責任を持って狩猟をしています」と皆さん節度を守りながら狩猟をしており、自然環境を守ることにもつながると徳田さん。「大学で勉強していると、人と動物たちが安心して暮らせる環境を実現させるのが難しいなと感じることもあります。ですが、さらに知識を深めて理想的な環境に少しでも近づけていきたいです」と意欲を燃やします。ハンターの高齢化が進む岩手県。大好きな岩手の自然環境を守るため、活動に取り組む若きハンターの活躍に期待が高まります。

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プロフィール

2004年、雫石町生まれ。盛岡中央高等学校へ進学し、進路を決めた際「人と動物たちが共生できる環境」について考えるようになり、狩猟の道を見つけ在学中にわな猟の免許を取得。現在は岩手大学農学部 森林科学科で日々勉学に励む

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