笑顔に支えられ30周年

笑顔に支えられ30周年

インタビュー
触澤支配人
ホテル森の風鶯宿 支配人
觸澤 芳則 さん
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● 開業から30年を 振り返って

 今年11月、開業30周年を迎える「ホテル森の風鶯宿」。ウオーターパーク「けんじワールド」を併設した温泉ホテルとして1995年にオープンしました。その後、別館の「風の館」の新設や、プール施設から「フラワー&ガーデン森の風」にリニューアルするなど、時代に合わせて変化を続けてきました。現在は岩手を代表する温泉リゾートとして多くの方に親しまれています。「オープン当時は現在の約5倍のスタッフがいて、未経験者ばかりでノウハウも乏しく苦労したと聞いています」と話すのは、支配人の觸澤芳則さん。開業4年目に入社し、これまでの移り変わりを知る人物です。

 長くフロント業務に従事し、お客さまと接する機会が多かったという觸澤さん。「最近は個人のお客さまよりインバウンドや団体が多くなっていますが、入社した当時はけんじワールドを目当てにお子さんやお孫さんを連れたファミリー層でにぎわいました。閉館直前の2013年の夏休みには、プールだけで1日に約4千人もの来客があり、大渋滞になったのを覚えています」と振り返ります。

 月日が流れ、その当時のお子さん、お孫さんが大人になり、子どもの頃の楽しい思い出が詰まった場所にまた戻ってきてくれるのがうれしいと話す觸澤さん。「おじいちゃん、おばあちゃんが動けるうちにと2世代、3世代でお越しいただくこともあり、森の風が家族の大切な場所になっているのかなと思うと本当にうれしいです。来てよかったと皆さんに満足していただけるよう、何かできることはないか、そればかり考えています」と話します。

 觸澤さんが支配人に就任したのは、コロナ禍まっただ中の20年11月のことでした。「非接触がスタンダードとなり、従来のサービスが提供できない時期が続き、毎日胃が痛みました」と話します。

 コロナ禍収束後も業務の効率化、人件費削減などの観点から非接触対応を続ける宿泊施設が多い中、ホテル森の風鶯宿はお客さまとの接点を増やす方向に舵を切りました。

「そこからお客さまが笑顔になるヒントをいただくことは多々あります」と觸澤さん。「例えば、お部屋まで案内する何気ない会話の中で、実は結婚記念日や誕生日など記念日で来ていただいたと分かることがあります。事前にリクエストがなくてもお祝いメッセージ付きのデザートプレートをご用意すると、皆さん笑顔になりますね。その笑顔が見たくて、私もスタッフもこの仕事を続けているのだと思います」。

 このような取り組みが成果を上げ「じゃらんアワード2024東北ブロック」の「じゃらんOF THE YEAR泊まって良かった宿大賞(総合)」で第1位に選ばれました。開業から30年、お客さまに喜んでいただきたいという思いが大きな花を咲かせました。

●30年分の感謝を 心を込めて届けたい

 節目を迎え、今年最大のミッションはお客さまに感謝を伝えること。「ありがとうにかけて10の特典を付けた『特別プラン』を企画しています。これまでお世話になった1万人を超えるお客さまに、秋頃からご案内をさせていただく予定です」と觸澤さん。

 開業当時からご愛顧いただいている年配の方々を想定し、リクエストに応じて和室に和ベッドを設置。お祭り広場での民謡ショー、餅つき、縁日など、お子さんやお孫さんと一緒に楽しめる場も提供します。「リゾートホテルのお客さまは大切な人と特別な時間を楽しむためにいらっしゃいます。30年分の感謝を込めて、そのお手伝いをさせていただきたい」と話します。

 30年という時間の中で、お客さまと同様に地域とのつながりも生まれました。「鶯宿温泉の路線バスが廃線になり、公共交通機関では利用できない宿が何軒かあります。相談を受けて、他の宿のお客さまも森の風のシャトルバスで送迎しています」と觸澤さん。「困った時にはお互いに助け合い、鶯宿温泉全体の活性化につながればうれしい」と話します。

 読者へのメッセージをお聞きすると﹁気付かずに準備できていないものがまだまだあると思いますので、森の風に足りないもの、望むものを教えてほしいです﹂と觸澤さん。お客さまとコミュニケーションを取り、助言をいただきながら、これからも地域とともに歩んでいきたいと話します。

プロフィール

1974年、盛岡市生まれ。プロ野球選手に憧れ、小学4年生からスポーツ少年団に所属し野球一筋で育つ。岩手県立盛岡商業高等学校卒業後、JA都南(JAいわて中央)入組。1999年にホテル森の風鶯宿に入社、グループのホテル森の風田沢湖、ホテル森の風沢内銀河高原、ホテル森の風立山勤務を経て2020年にホテル森の風鶯宿支配人就任。座右の銘は「有言実行」

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