エフエム岩手開局40周年

エフエム岩手開局40周年

インタビュー
株式会社エフエム岩手 代表取締役社長 藤村 惠一 さん
株式会社エフエム岩手 代表取締役社長
藤村 惠一 さん
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● 伝える喜びが原点に

 運転中や家事の最中、休憩時間の団らん中など、何かをしながらでも音だけで楽しめるラジオ。テレビやインターネットが普及した現在でも地域の情報や災害時の緊急情報を伝えるツールとして重要な役割を担っています。そんなラジオの魅力をもっと幅広い世代に伝えるために奮闘しているのが、株式会社エフエム岩手代表取締役社長の藤村惠一さん。アナウンサーとして岩手の「今」を伝え、全国を駆け回ってきた人物です。

 幼い頃からアナウンサーに憧れがあった藤村さん。その思いが強くなったのは大学時代に所属したアナウンス研究会での活動がきっかけでした。「東京六大学野球やラグビーなどスポーツが盛んな大学で、練習中のラグビー部の選手に取材したり、試合の日には仲間と会場に行って実況の練習をしていました。活動を続けるうちにこういう仕事に就きたいと強く思うようになっていましたね」と選手の熱い思いや白熱する試合を現場から伝えることに魅力を感じたと話します。

 その後、テレビ岩手にアナウンサーとして入局し「ニュースプラス1いわて」のキャスターや情報番組「夢見るピノキオ」のナレーションなど幅広く活躍。中でもスポーツ関連の取材が多く、数々の感動的な場面に立ち会ってきたと振り返ります。「菊池雄星投手擁する花巻東高校の春の選抜準優勝や夏の甲子園ベスト4の試合、スキージャンプの小林陵侑選手や2013年に開催された国体陸上女子400mリレーでの岩手チームの初優勝など歓喜の瞬間を目の当たりにすることが多かったです」。さらに驚きなのはメイセイオペラが中央競馬GⅠで優勝した瞬間も現地で取材していたとか。馬主席からその光景を目にし、あの時の感動的場面は今でも忘れられないといいます。「偶然が重なっているだけだと思うのですが、関係者から私が取材に行くと勝つというジンクスがささやかれているみたいで。私自身も歴史的な場面を現地から岩手の皆さんに伝えることができて非常に嬉しかったです」と微笑みます。

 そして21年、惜しまれながらもアナウンサーを卒業した藤村さんは、編成局責任者として番組全体の進行管理を任され、今年6月からは株式会社エフエム岩手代表取締役社長に就任。「テレビからラジオの世界に行くことになり戸惑いましたが、岩手の皆さんに情報を届けることには変わりない」と決意を新たに次のステージに挑みます。

●ラジオの可能性を 広げるために

 社長就任後、ラジオを取り巻く環境の厳しさを知った藤村さん。さまざまな課題に直面しますが、意外な発見もあったといいます。「運転中しかラジオは聴いていなかったのですが、エフエム岩手に移ったことを周囲に伝えると『毎日出勤前に聴いています』、『配達のときによく聴いています』という声をもらい想像以上にラジオを聴いてくれている人がいることを知りました」と身近なところで反響を感じ、リスナーとの距離の近さに驚きます。

 さらに自身も毎朝ラジオとテレビの同時視聴を始めてみることに。音量を下げたテレビを見ながらラジオからの音楽やトークを聴いていると非日常的な感覚になり、心地よさを感じたそう。「岩手だと運転中や農作業や仕事の合間、家事をしながら聴いてくれている人が多いと思います。どんな状況で聞いてもラジオは生活に『音』で潤いを与える存在だと感じました」とラジオの魅力を再確認します。

 そして、ラジオの可能性についても新しい視点を持つように。「最近では多くの人がスマホやパソコンを持っていますので『ラジコ』というサービスを使えば放送後や県外でもエフエム岩手が聴けたり、興味を持てば自分で調べられる時代になっています。ラジオから流れる音で想像させたり、気になるキーワードを並べてスマホなどで調べてもらえるよう仕掛けるのがこれからのラジオの形なのではないかと考えています」とSNSなど最新のツールと組み合わせた新しい番組づくりに意欲を燃やします。

 10月1日に開局40周年を迎えるエフエム岩手。記念日当日はラジオの公開生放送を行ったり、40周年記念イベントも企画しているといいます。「ラジオを愛してくれる皆さまのおかげで40周年を迎えることができました。これからも皆さまの暮らしのそばで『音の潤い』を届けられる存在であり続けたいです」と笑顔の藤村さん。数々の歴史的瞬間に立ち会ってきた“勝利のジンクス”を胸に、これからはラジオを通して新たな感動を届けてくれます。

プロフィール

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。明治大学法学部に進学し、91年にアナウンサーとしてテレビ岩手に入局。ニュース番組や情報番組などを担当し30年にわたり岩手の情報を伝える。2021年にアナウンサーを卒業し同局の編成局長兼編成部長に就任し番組全体の進行を支え、25年6月に株式会社エフエム岩手 代表取締役社長に就任。健康の秘訣はJ-POPなど最新の曲を耳コピしてピアノ演奏することと自分で作った刺身盛りで日本酒や岩手のクラフトビールなどをたしなむこと

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