【さまざまな大病が隠れている可能性も】2.胃潰瘍の早期発見を

【さまざまな大病が隠れている可能性も】2.胃潰瘍の早期発見を

いわて医療通信
岩手医科大学 いわて医療通信

 胃潰瘍は悪心(おしん)(吐き気)・嘔吐、食欲不振、心窩部(しんかぶ)(みぞおち)の鈍い痛みなどさまざまな症状が生じます。潰瘍から出血すると、吐血(口から血を吐く)やタール便(黒い便)が見られるようになります。さらに潰瘍が深くなり穴があくと内容物が腹腔内に漏れだすため、腹膜炎を起こして強烈な腹痛が出現します。胃潰瘍の原因は主にヘリコバクター・ピロリ菌感染、NSAIDs(痛み止めで使用される非ステロイド系抗炎症薬)の2つであることが分かっています。NSAIDsは解熱・鎮痛・炎症を抑えることを目的として使われる薬剤です。リウマチや関節の痛みなどで使われることが多い薬剤ですが、脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に使用されるアスピリンもNSAIDsの一種です。ピロリ菌感染率の低下や高齢化社会に伴いNSAIDsによる潰瘍の割合が増加してきています。先日も、かかりつけ医の定期検査で貧血を指摘されて、当科に紹介され、胃カメラで胃潰瘍が見つかった方がいらっしゃいました。無症状とのことでしたが、詳しく問診すると腰痛で痛み止めを使用しており、「そういえば最近便が黒かった」ということでした。NSAIDsは痛み止めなので、NSAIDsによる胃潰瘍では腹痛が少ないことも特徴です。そもそも消化性潰瘍とは、攻撃因子(消化液・胃酸)と防御因子のバランスが崩れた状態で、攻撃因子が優位になると、粘膜が傷つきます。消化性潰瘍の治療には胃酸の分泌を抑える薬の内服に加え、NSAIDsを内服していれば、内服の中止、変更を行います。潰瘍がよくなるまでは過労やストレスを避けることが必要です。出血や心窩部痛など症状のひどいときは、禁酒、禁煙し、胃酸の分泌を促進する食べ物(脂っこい食事、甘いもの、酸っぱいもの、コーヒー、アルコール、強い香辛料)を控えましょう。また、ピロリ菌に感染していると一度治癒しても繰り返し再発することが知られているので、ピロリ菌感染があれば、除菌治療を行います。除菌治療は、抗菌薬を7日間続けて服用していただくだけの、ご負担の少ない治療です。消化性潰瘍の症状は個人差があります。すでに大きな潰瘍があるにも関わらず、まったく痛みを感じていない、という方もいますし、吐下血で気が付くまで全く症状がなかったという方もおられます。特にNSAIDsを内服している場合は便の色にも注意していただき、気になる症状がある場合にはかかりつけ医や消化器内科の専門医に相談してみてください。

岩手医科大学医学部
内科学講座  消化器内科分野

梁井俊一

■取材協力

岩手医科大学 >>

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