【超高齢化社会を支えるお仕事】2.脳と神経

【超高齢化社会を支えるお仕事】2.脳と神経

いわて医療通信
岩手医科大学 いわて医療通信

 前回、脳神経内科はどんな診療科なのかをお話しました。端的に申し上げると、脳と神経の病気を診る、あるいは研究する診療科となります。今回は名前にもなっている脳と神経についてお伝えします。

 神経という言葉から連想されるためか、精神科と間違えられることがあります。一般的に神経とは「あの人は運動神経がいい」というように人体の肉体的な機能に用いられますが、「神経質な性格」などに象徴されるように性格や精神面の特徴を表現する言葉としても用いられます。神経という言葉は江戸時代に『解体新書』で初めて『神經』と記載されました。『神氣』と『經脉』を合わせた造語で、『神氣』とは全ての生理活動を主宰するもの、『經脉』とは人体の気血栄衛(気や血や水など生きるために必要なもの)の通り道という意味です。つまり医学的な神経という言葉のもつ意味合いは精神とは全然違うのです。

 そして脳とは、脊髄と共に別名を中枢神経と呼びます。脳はおおまかに大脳、小脳、脳幹に分けられ、大脳はさらに前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けられそれぞれに担っている機能的な特徴が異なります。脳幹もまた中脳、橋、延髄に分けられ、人体の生理的恒常性を維持するための中枢として間脳も含まれます。脊髄は背骨の中を走る非常に長い構造物のため頚髄、胸髄、腰髄に分けて取り扱います。

 一方、顔面や手足の神経は末梢神経と呼ばれます。末梢神経は、大脳や脳幹から直接、枝分かれして顔面や咽喉頭部に分布する脳神経、脊髄から枝分かれする脊髄神経、中枢神経全体から枝分かれして手足や内臓に分布する自律神経が含まれ、脊髄神経は運動神経と感覚神経を含み、自律神経は交感神経と副交感神経を含みます。

 脳と神経は人体全体に分布して、中枢神経と末梢神経が統合し、運動機能や感覚機能、自律神経機能などを介して生命活動の営みを制御しています。認知機能を制御して情緒や感情の機微を創出し、跳んだりはねたり、泣いたり笑ったり、生きてゆく上で必要なあらゆる活動を司っています。運動神経は骨格筋をも制御していますが、筋疾患もまた私たち脳神経内科の診療がカバーする領域です。

 次回はこの人体全体に関わる脳と神経の働きに障害を来す病気を解説します。

岩手医科大学
脳神経内科・老年科

前田哲也

■取材協力

岩手医科大学 >>

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