【三角錐の誘惑】地図から始める 謎学妄想の一例

【三角錐の誘惑】地図から始める 謎学妄想の一例

風のうわさ
風のうわさ イワテ奇談漂流

高橋政彦さん

 今年5月頃だったか、雫石から国道46号を盛岡に向かってハンドルを握っていた時のことだ。

 車窓左斜め前方に「七ツ森」の生森山(おおもりやま)が見えるところまで来たあたりで、右手の南昌山方面に小ぶりな三角錐の山を発見した。

 私は三角錐の山に目がない。いわゆるピラミッド型の山を見るとなぜだか心が騒ぎ出す。

 低く歓喜の声を漏らしながら、移動を続ける車窓から場所を確かめた。おそらく御所湖よりは向こうだが、南昌山塊よりは手前のように思われた。しかし運転中でもあり、明確な情報は掴めない。帰宅したらすぐに調べようと心に決め、法定速度の範囲内で帰路を急いだ。

 家に入るとすぐに昭文社の「県別マップル道路広域・詳細」をひっぱり出し、アタリをつけていた地域のページを開いて凝視した。先ほど走っていた国道46号沿線の生森山麓から眺めた南の方角を辿り、そのエリアに点在する山々を探っていく。私がいた側から視線を伸ばし、三角錐に見えそうな山を等高線の幅などを確かめ、頭の中でフィールドワークするのである。

 まずは矢櫃(やびつ)ダム近くにある滝沢山(たきざわやま)なる山が目に止まった。しかし、地図に記された等高線から地形を想像するも、円錐形、つまりピラミッド状の山容にはほど遠いことがわかった。

 首を捻りながら、なおも周囲に視線を動かしていくと…ふと、一つの名もなき小山が目に止まった。「むむ、これかもしれない!」と、思わず歓喜の声が漏れる。

 さらなる情報を得るべく、すぐさまスマホ検索だ。見つけた立体的な表現のネット地図には、名称こそ記されていないが、あきらかにピラミッド状の山が存在していた。それも私が見た側からだけでなく、死角になっていた反対側から見てもパーフェクトな三角錐である。

 私は興奮しながら、さらに調べを進める。すぐそばに九十九沢(つくもざわ)なる川と林道があることも立体地図からわかった。これなら行ける。現地探査だ。我が興奮は高まる一方である。

 即座に現場に駆け出したくなったが、山のフィールドワークというものは、葉が生い茂り、緑が豊富な季節は障害物が多く難易度が高い。

 葉が落ち、藪もスカスカで見通しがよくなる晩秋から初冬がよろしい。もちろん雪が積もったりする前にである。いずれ遅くとも年内のうちに、一度足を運んでみようと決めて、その時期までにさらに調べを進め、想像や仮説を立てて興奮を鎮めつつ、楽しむことにした。

 発見、調査、妄想、想像、仮説、現地調査、さらなる妄想…。謎学探訪をライフワークにすると、こういう、ややもすると変態的な喜びに終始する日々となる。関心のない人たちから見たらヤバい男に見えるのだろうが、個人的には意に介さずだ。興味的価値の勝ちだからである。

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