取材協力:喫茶&工芸 とちの実
滝沢市柳沢保育園を岩手山方向へ進むと「コーヒー」というのぼりと「とちの実」と書かれた看板が見えてきます。そこを曲がり、砂利道を進んで行くと生い茂った木の合間に見える建物が喫茶店「とちの実」です。
朗らかな笑顔で出迎えてくれたのは店主の佐藤由紀子さん。3歳の頃、父親が木工職人に転職、修行のため漆工芸で有名な会津若松に家族で移り住みます。その後、知人の薦めで岩手に工房を構えることになり小学生のときに岩手にやって来ました。
「うちの漆器は漆を塗り重ねる『拭き漆』という技法で、黒っぽい仕上がりだけど時が経つと木目が出てきて深みが増してきます」と佐藤さん。その漆器の良さを手に取って見てほしいと7年前に自宅の一部を漆器の展示販売をする店に改装。「ここでコーヒーを飲めるようにしたいねとずっと家族で話をしていました。父が早いほうがいいと喫茶店のオープンを決め、漆器作りで忙しい両親に代わり私が店に立つことになりました」と開店が急に決まり戸惑った佐藤さんでしたがお客さんに喜んでもらえるようなメニューを考えたり、設けられた展示スペースに父親の工芸仲間の方たちが作ったガラスや陶器の食器も置くなどお店作りに取り組みます。置かれた作品はどれも繊細で味わい深いものばかり、”岩手にこんな素敵なものを作る作家さんがいるなんて”と新たな発見もできそう。店内の大きな窓からは野鳥の姿が見られ、運が良ければリスが顔を覗かせることもあるとか。壁の振り子時計の規則的な音が心地良くずっと外を眺めていたくなる癒しの空間となりました。
メニューのコーヒーは一関市の焙煎が評判の専門店から豆を仕入れており、酸味が少なくまろやかな一杯。おすすめスイーツのクッキーとチーズケーキはどちらもオリーブ油ときび砂糖が使われ、ほのかな甘さが特徴です。「ここに来ると癒されると言ってもらえると嬉しい」と笑顔の佐藤さん。ゆったりとした空間で時間が経つのも忘れてしまいます。