ピリッと冷えた厳冬の空気感が心地よい。「朝島山・ほくほくトレッキング冬山入門編」としゃれこんで、シニアナビ筆者の大森ふじお氏とシニアズ編集長をお誘いした。
朝島山の魅力は、頂上の優れた眺望にある。北西の岩手山に対し、南東には早池峰山がそびえ、扇のようにずらっと居並ぶ南昌山山塊は真西だ。この眺望抜群の頂へ、わずか1時間で登られることも大きな魅力であろう。青と白が織りなす清潔な大ヶ生(おおがゆう)の冬景色を見おろし、大森さんが呟いた。「まるで日本昔ばなしだね」と。
北上川と国道396号の東に位置する黒森山837m・鬼ヶ瀬山724m・朝島山607mは大ヶ生三山である。兄弟の背比べになぞらえ、高い順から長男、次男。三男坊の朝島山は、南から盛岡に北上したとき真っ先に目に飛び込む。北上川の川面に春霞がたなびくころ、「朝モヤの中からボ〜ッと浮かび上がる島のように見える」この美しい現象により朝島山と名付けたという。登山口は東側の立岩神社コースと、南側の中央コースだ。二つを結んで3.6㎞、防寒靴で約3時間の縦走ができる。
大寒波が去った次の日は無風、晴れ安定の山日和であった。まずは、国道396号より大ヶ生徳田線を乙部川沿いに東進して、リンゴ園の看板を左折。スギの造林地を直進すると立岩神社コースの登山口に着く。参道を登って祠と大岩の上部へ進むと、一気に高度感が増す。背後から鬼ヶ瀬山が迫り、どっかと座す黒森山も遠くに見えてくる。スギ林を過ぎ、吹き溜まりの尾根を通って山頂に至る。寒さがこないうちに、中央コースから鉱石跡をたどって下山した。
さあ、立岩神社の簡易小屋にもどってランチタイムだ。熱い汁は冷えた体に効く。かくかくしかじか—お二人は厳冬の朝島山を楽しんだかしら。