人形劇で地域を笑顔に

人形劇で地域を笑顔に

インタビュー
インタビュー 人形劇『ポレポレ』 代表馬場 幸子 さん
人形劇『ポレポレ』代表
馬場 幸子 さん
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● 子育てママが集まり人形劇団を結成

 陸前高田市を中心に活動する人形劇グループ『ポレポレ』。見てくれた子どもたちの心を豊かにしたいと活動するアマチュア人形劇団です。代表を務める馬場幸子(ばば さちこ)さんは、子どもと一緒に「花巻おはなしキャラバン」の人形劇を見たのをきっかけに劇団を結成したと話します。「子どもたちが声を出して楽しむ姿を見て、私もやってみたいと思った」とその思いを子育てサークルの仲間に話すと、10人以上が賛同し「すみれ」として始動することになりました。

 まずは人形の作り方や動かし方を本を参考にして学び、そして人形劇の公演にも足を運んで舞台の魅せ方や演じ方などを研究したそう。「子どもたちがお話しの世界に入り込んで、つい声を出してしまうような夢中になれる劇にしたい」と自分たちの劇のスタイルを模索します。「自分たちらしいグループ名も考えていました。たまたま、ポレポレ(のんびり、ゆっくり)という言葉に出会い、焦らず気長にやっていこうと人形劇グループ『ポレポレ』に決めました」とできる範囲で練習を重ね、切磋琢磨していきます。こうして、翌年2月に旗揚げ公演の日を迎え、「始めたばかりの素人なのにお客さんがいっぱい入って喜んでくれて嬉しかった」と振り返ります。しかし、演じてみると「こうすればもっと良くなるのでは」と反省やアイデアが湧き出し、ブラッシュアップを繰り返して気付けば30年経っていたといいます。

● 仲間を失った苦しみを乗り越えて

 舞台で演じ、台本を書いたり人形や道具も作る、馬場さん。活動中の苦労をお聞きすると「読書もお裁縫もずっと好きだったから苦労だと思ったことはないけれど、震災で仲間を失ったことが一番辛かった」と話します。人形も活動拠点も流され、馬場さんをはじめ、メンバーの多くが仮設暮らしに。日々の生活で精一杯でしたが、ある日、東京で人形劇をしている人から「おおきなかぶ」の人形が届きます。「久しぶりにみんなに連絡して、集まることになりました。今は何もできないけどもう一度人形劇をやりたいと思っていて、その人形を見せて初めて再開の話をしました。そしたら『この人形を使ってやれることからやってみよう』とみんなの意見が一致して、活動再開することになりました」と「おおきなかぶ」の人形が背中を押しました。「いざ練習を始めると、ここにいてほしかった仲間のことを何回も思ってしまうんです」と喪失感を抱くこともあったそう。しかしこのままでは終われないと強い思いを抱き、前に進みます。

 震災から1年後、活動再開後初の公演となる「おおきなかぶ」を上演。翌年には「結成20周年記念公演」を行いました。「震災後は大人のお客さんも増えました。被災した人たちが多くて、小さいお子さんが声を出して一生懸命に応援する姿を見ていると、嫌なことを忘れて勇気が湧いてくるみたいです」と以前のように活動できず不安が残る中での再開でしたが、多くの人に楽しんでもらい嬉しかったといいます。

 活動を始めて約30年。昨年の「結成30周年記念公演」にはたくさんの人が駆けつけました。「100人以上のお客さんが来てくださって、高田を離れたメンバーもいて、再会できて本当に嬉しかったです」と笑顔が輝きます。最近では人形劇を見た子どもたちが親になり、親子で見に来てくれるそう。「ずっと続けてくださいと声をかけてもらって、あの時、人形劇をやりたいと声にしてよかったです。いろいろあったけど諦めず続けたことでいっぱい出会いがありました」と馬場さん。今日も『ポレポレ』の人形たちは地域のみんなを笑顔にしてくれます。

インタビュー 人形劇『ポレポレ』おおきなかぶ

プロフィール

1992年に人形劇サークル「すみれ」として発足し、1993年から保育施設や学校、イベントなどで公演を重ねる。東日本大震災により約8カ月間の活動休止を経て再起し、2013年に結成20周年記念公演、2023年には結成30周年記念公演を開催。60代のメンバー8人で活動中

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