女将目線で岩手を発信

女将目線で岩手を発信

インタビュー
いわておかみ会会長 橋本 英子 さん
いわておかみ会会長
橋本 英子 さん
(65)

● スーパー経営から女将へ転身

 昨年、設立30周年を迎えた「いわておかみ会」。岩手県内の50代から80代の女将17名で組織し、共に学び、時に励まし合いながら「おもてなし」の心と技を磨いています。2020年から会長を務めるのは「新安比温泉 静流閣」の橋本英子さん。会員数の減少や高齢化など課題はありますが、岩手で活躍する経営者を講師に招き研修会を行うなど、会員の役に立つ情報提供の場を設け、魅力あるおかみ会を目指し活動しています。

 女将就任前は、ご夫婦でスーパーマーケットを経営していた橋本さん。4人の子どもも成長し余裕ができた頃、ご主人のお父さまから「新安比温泉 静流閣」を継承することになりました。「スーパーのおばちゃんとして静かに暮らしていくものだと思っていましたから、戸惑いました」と橋本さん。「でも誰かがやらなければならないなら、それが私の後半の人生の役割なのかなとも思いました」と続けます。

 しかし、それまで温泉業務の経験がなく、仕事の流れもスタッフの名前も分からない状況でした。朝食スタッフとして現場に入ることから始め、一つずつ仕事を覚えていきました。

 経営について学ぶために加入した「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会 女性経営者の会(JKK)」では、素晴らしい経営者との出会いに刺激を受けているという橋本さん。全国に人脈を広げ、2018年から2年間副会長も務めました。「私がJKKで見聞きしたことをおかみ会の仲間と共有することで、岩手の温泉業界が抱える課題解決につながれば嬉しい」と話します。

● おもてなしのプロが岩手の魅力をPR

「いわておかみ会」では、岩手県観光協会と連携して観光PRも行なっています。これまで「盛岡さんさ踊りパレード」でのPRをはじめ、台湾での誘客PRキャンペーンや「ラグビーワールドカップ2019観光誘致PRキャンペーン」などさまざまな観光プロモーションに参加。コロナ禍で思うような活動ができない中、昨年は「日本スポーツマスターズ2022岩手大会」の開会式に合わせJR盛岡駅で観光パンフレットを配布しました。また、総会に県知事を招き意見交換したり、大臣や観光庁長官を直接訪問し陳情するなど、観光業界の生の声を行政に届ける役割も担っています。「女将になって13年、お客さまや同業の仲間、行政の方など人脈が広がり、人生経験がとてつもなく広がりました」と橋本さん。全く経験のなかった温泉旅館の女将を引き受けたことで想定外の苦労もありましたが「今の方が幸せ」だと笑顔で話します。

 海があり山があり、豊かな大自然が広がる岩手県。内陸と沿岸、県北と県南では景色もお料理も異なり、エリアごとに特色のある温泉が点在しています。「岩手には素晴らしい観光資源がたくさんあるのに、まだまだ知名度は低い」と橋本さん。「どうやったら県外、海外の方が岩手に目を向けてくれるのか、おかみ会をはじめオール岩手で本気で考えていかなければならない」と続けます。今後は組織のデジタル化を進め、SNSなどで会員相互の情報交流を活性化させ、女将目線の情報発信を予定しているといいます。 「コロナ禍で県外への外出を控えている方もいらっしゃると思いますが、県内各エリアにゆっくりできる良いお宿がたくさんあります」と橋本さん。一年で最も冷え込むこの季節、近場の温泉で心も体も芯まで温まるぜいたくな時間を過ごしてみませんか。

土地探しから始めた単独店第1号の「矢巾店」。ここでの苦労が「薬王堂」の大きな飛躍につながりました

プロフィール

1957年、釜石市生まれ。高校卒業後、新日本製鐵株式會社釜石製鐵所の所長秘書を経て結婚を機に八幡平市へ。義父経営の日用雑貨店、スーパーマーケット、レストランで経験を積み2009年に「新安比温泉 静流閣」副社長兼女将に就任し、2020年から「いわておかみ会」会長。7人のお孫さんが元気の源で、好きな言葉は「感謝と謙虚」

この記事をシェアする

Facebook
Twitter