『怪しい来客簿』などの作品で知られる作家・色川武大(いろかわたけひろ)は1989(平成元)年3月、東京から一関市に転居しました。色川は1929(昭和4)年3月28日、東京で生まれました。1978(昭和53)年、『離婚』で第79回直木賞を受賞しています。
色川が一関市に転居したのはジャズ喫茶・ベイシーのマスター、菅原正二さんとの縁でした。二人は1978年ごろ、四谷三丁目にあったホワイトというバーで知り合い、親しくなりました。ジャズ好きであった色川はたびたび一関市のベイシーを訪れるようになりました。
「これからはもっと文学に本腰を入れたい」という思いで一関市にやって来た色川でしたが、引っ越しの荷物をほどき終わらない4月10日に急逝しました。一関市での生活は1カ月にも満たなかったのです。60歳でした。
色川は純文学執筆の際は本名を使いましたが、ギャンブル小説執筆の際には阿佐田哲也というペンネームを使いました。阿佐田哲也名義で発表した『麻雀放浪記』はベストセラーとなり人々に愛されました。そのことにちなみ、一関市民の有志はその死を悼み翌年から、命日の4月10日には法要をし、「阿佐田哲也を偲ぶ麻雀大会」を長く続けました。