縁がつないだ笑顔の畑

縁がつないだ笑顔の畑

インタビュー
インタビュー 「はるみさんの畑」 代表 佐々木 晴美 さんさん
「はるみさんの畑」 代表
佐々木 晴美 さん
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● 何事もゼロではない

 のどかな田園風景が広がる盛岡市上太田地区。「はるみさんの畑」と書かれた表札を掲げた一軒家があり、奥に進むと畑仕事をしている佐々木晴美さんが笑顔で出迎えてくれます。

 数年前まで家庭科の教員をしていた佐々木さん。家や職場で節目のタイミングを感じて退職し、現在は義両親の畑で野菜作りに専念しています。「教員時代は本当に忙しくて、授業の準備だけじゃなく、部活や委員会、地域のことなどやることがいっぱいでした」と遅い時間まで仕事をすることが多かったと話します。

 目まぐるしい毎日を送っていた佐々木さんですが、結婚を機に旦那さんからの勧めで野菜作りに挑戦します。「当時住んでいたのが宮古市で旦那さんが畑を借りてくれたんです。好きな苗を植えて良いよと言われましたが、初めての野菜作りだったのでうまくできるかあまり自信がありませんでした。ですが失敗してもゼロではない、次に生きる材料になると信じて細かく記録をつけていきました」とその日の作業や天候など毎日、記録を残し、本で学びながら実践を繰り返したと言います。「小さな種から芽が出てツルが伸びたり、可愛い花を咲かせる姿が愛おしく、風が強くても負けずに育っているのを見ると生命力の強さを感じました」と初めて野菜を育てたのが楽しくて野菜作りが趣味になりました。

 その6年後、転勤が決まり盛岡で義両親と暮らすことに。「義両親の畑はきれいな畑だと評判だったのですが、初めて見たときに本当に雑草がなくて驚きました。この状態を保てるか不安でしたが、それでもこの景色を守っていきたいと思いました」と手伝いながら2人から畑仕事を教わります。朝早く起きて畑仕事をしてから出勤し、学校から夜遅く帰ってくる毎日を繰り返していた佐々木さん。「大変でしたが、畑仕事をするのが楽しくて、野菜の生長する過程や可愛い花を見るのも好きなので苦になりませんでした」と笑顔で話します。この生活は教員を辞めるまで続きました。

● 楽しくみんなで野菜作りを

 野菜作りを始めて20年の2020年、畑仕事を続けるのが難しくなった義両親のことを考えて退職を決意した佐々木さん。自由に野菜作りを始めますが、売るのは得意ではなかったと言います。「今まで、作った野菜は親戚や友だちにあげたり、調理実習で使用したりしていたので金額を決めるのは苦手でした。農家としての規模も小さくて野菜を売って生活をしていくのは難しかったです。ただ、野菜作りは続けたいので『野菜作りをしている自分を売ろう』と思いました。教員時代にさまざまな業務も引き受けていたので野菜作りを通していろんな仕事をしたいと思い、個人事業主として『はるみさんの畑』を開業しました」。すると知人からもりおか若者サポートステーションの就労支援の一環で、「若い人たちに農業体験をさせてほしい」という依頼が。野菜作りの魅力を伝えたいと思っていた佐々木さんは引き受けることにし、自分の畑に若者たちを招き入れます。「参加した皆さんが生き生きと楽しそうに作業している姿が印象的でした。のびのびと作業をして就労への自信につながってほしいと思いました」と佐々木さん自身も仕事の新しい形を見出します。

 その後も、いろいろな人とのつながりで、盛岡中央公民館からの依頼で市民講座「はじめての家庭菜園」の講師を引き受けたり、盛岡中央公園内「ビバ農園」で保育園の子どもたちとふれあいながら楽しく畑作りを教えたり、最近ではフリースクールを開くなど幅広く活動しています。「今までの経験で準備が大事だというのはわかっていたので、相手が何を知りたいのか、そしてどうやったらわくわくしてもらえるか考えながら教える準備をしています」と楽しく学んでもらえるよう毎回工夫していると言います。「畑仕事は体を動かすし、野菜から栄養をもらうことができる、野菜は心と体の健康にもつながります。野菜を作ってみたいと思う人が増えると嬉しいです」と笑顔の佐々木さん。「はるみさんの畑」は今日も明るく活動しています。

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プロフィール

1968年、西和賀町生まれ。家族で商店を営み、田んぼや肉牛も飼育していたので幼いころから家の手伝いをして育つ。8人家族で過ごし、地域の人ともつながりがあったため人見知りしない明るくポジティブな性格に。家庭科の教員として県内各地に勤め、早期退職をして「はるみさんの畑」を開業し幅広く活動する

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