ビリヤードは生きる喜び

ビリヤードは生きる喜び

インタビュー
岩手県ビリヤード協会 事務局長
久慈 薫 さん
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● ビリヤードの 楽しさを伝えたい

「コーン」と心地よい音が響くのは、岩手県ビリヤード協会が主催する「シニアビリヤード教室」。この教室で、参加者一人ひとりの体力や経験に合わせて丁寧に指導しているのが、同協会の事務局長 久慈 薫(くじ  かおる)さんです。

 久慈さんは、ビリヤード一家に育ちました。父は全日本チャンピオンの町田善司さん、弟はA級プロ選手の町田正さん。15歳のころ、実家のビリヤード場で遊びながら始めたビリヤードを、父が本格的にスポーツとして教えてくれたといいます。「褒められるのが嬉しくて、きょうだい5人で楽しんでいました」と笑顔で振り返ります。

 当時、体が弱かったという久慈さんですが、体力づくりにもつながり、20歳で出場した「全関東女子四ツ玉優勝大会」では見事3位入賞。結婚を機に競技から離れましたが、37歳でご主人の転勤先・花巻市に移り、ビリヤード場を開業しました。「スポーツとして楽しめる場所を作りたくて、39歳で日本プロポケットビリヤード連盟のプロライセンスを取得しました。自分が大会で結果を出すことで、お客さまが誇りを持てたら嬉しいと、全日本選手権には10年連続で出場したんです」と語ります。

 その後も、「ワールドプールチャンピオンシップ」などの国際大会に挑戦。63歳で出場した「全日本女子スリークッション選手権」でベスト10に入ったのを最後に、選手としての活動に区切りをつけました。

●自分の技術と経験を 地域社会のために

 久慈さんのもう一つの大きな活動が、35年以上にわたるボランティア指導です。「ビリヤード場の経営に悩んでいたとき、最後に地域のために何かできないかと思って始めたのがボランティアでした」。花巻市のスポーツ振興課や社会福祉協議会に何度も足を運び、1989年に「シルバービリヤード講習会」を実現。翌年には定期教室がスタートし、遠野市・江刺市・北上市・一関市・盛岡市と、指導の輪は岩手県内に広がっていきました。

「地域のために、自分の技術や経験を活かしたい」という思いで続けてきたこの活動は、やがてシニアから親子3世代、障がいのある方にも広がり、久慈さんにとってかけがえのない“生涯のライフワーク”となりました。「ビリヤードの一番の魅力は、年齢に関係なく“日々進歩”を実感できること」と久慈さんは語ります。「新しいことに挑戦して、自分の成長を感じられると、いくつになっても向上心や自信が持てるんです。仲間ができて、おしゃれも楽しめて、ビリヤードって本当にいいことばかり」と、晴れやかな笑顔で語ってくれました。

 こうした活動が認められ、2022年10月14日、東京都千代田区で開催された文部科学省の表彰式において、久慈さんは「生涯スポーツ功労者」として表彰されました。ビリヤード界からの受賞は初めての快挙であり、地域におけるスポーツの健全な普及および発展に久慈さんの活動が、顕著な成果を上げたと認められた瞬間でした。「心も体も健康で、自分らしい人生を楽しむお手伝いがまだまだできたら」と話す久慈さん。「百聞は一見に如かず」。まずは一歩を踏み出し、進歩する喜びを感じに、ぜひ足を運んでみませんか。

プロフィール

「全日本選手権」ほか「WBPAホノルルクラシックトーナメント」など海外試合にも出場。発起人メンバーとして2003年に岩手県ビリヤード協会を設立し事務局長に就任、日本ビリヤード協会監事、日本ビリヤード協会東北支部理事長。アクティブシニアが集う シニアビリヤード教室(会場:バディーズクラブ/盛岡市青山3-27-10)毎週火・水曜日は14時から18時、木曜日は16時から18時まで予約なしで見学できるとのこと

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