● キリストの 愛の教えに導かれ
岩手県唯一のカトリック学校、盛岡白百合学園中学高等学校。明治25年に開校した「私立盛岡女学校」が起源であり「キリストの愛の教えを通じ、社会に貢献する人の育成」を理念に掲げ、130年以上その思いを守り続けてきました。
そんな女子教育の先駆けである盛岡白百合学園が2026年4月からの男女共学化を発表。「少子化など社会変化への対応、そして男子にもカトリックの人間教育の機会を提供するため共学化することになりました」と校長の浅沼千明さん。長きにわたり学園を支えてきた先生です。
1994年、数学の教員として着任した浅沼さん。素直な生徒が多く、校内も大らかな雰囲気で環境に恵まれたといいます。中学から高校まで持ち上がりで担当する機会も多く、自然と生徒との距離も深まり次第に一人一人の人生を左右する大事な時期に関わっているという意識を持つようになります。「『この子をなんとかしてあげたい』という気持ちが強まり、授業のスピードも早く、難易度も上げていました。負荷をかけていると思いましたが、志望校に合格させるため『一緒に頑張ろう』と励ましながら伴走してきました」。
さらに、掃除などの生活面でも厳しく指導してきたといいます。「見えない部分でも皆が気持ちよく使えるようにきれいにしなさいと言い続けていたら『千明先生がお姑さんだったら、つらいなー』という生徒もいましたね」と楽しそうに振り返ります。しかし、その厳しさの根底には深い愛情が。「卒業後に『先生、あの時はごめんなさい』や『先生たちの指導のおかげで今の自分がいます』と言ってくれる生徒もいます」とたくさんの教え子がその愛を感じており、感謝を伝えに学園を訪れてくれると話します。
そして、2019年の春。浅沼さんは盛岡白百合学園の校長に就任。「現場を離れることに心残りはありましたが、白百合を守っていくため引き受けることにしました」と新たな一歩を踏み出します。
●ともしびを 消さないために
校長就任後、業務が大きく変わり慌ただしい毎日を送る浅沼さん。教員の職場環境改善や校内の整備など課題解決に臨みます。
しかし、程なくしてコロナウイルス感染症が世界的に流行。学園運営においてこの未曾有の事態に、さらなる変化への対応が求められるようになりました。「この状況をなんとかしようと、今までしてこなかったメディアへの露出を行い、多くの人に興味を持ってもらおうと考えました」と浅沼さん。「さんさ甲子園」への出場や校内での日常や魅力を伝えるSNS投稿、動画チャンネルの開設など広報活動を幅広く実施。外部の方にも広まり、山の上の秘密の学園という閉鎖的なイメージを一変させる大きなきっかけとなりました。
時代に即した変革を推進するため、奔走を続ける浅沼さん。「共学志向の高まりや少子化の影響が大きくなってきている盛岡でどう変化したら良いか、東京にある学校法人『白百合学園』に相談をしました」と未来の盛岡白百合学園のため、本部と何度も協議を重ねます。「話し合いの結果、カトリックの人間教育の場を広く提供したいという思いにいたり、その一歩を進めようということになりました」。その後、学校法人白百合学園理事会で共学化が決定。学園は新たな道を歩むことになりました。
そして、男子生徒を受け入れるため硬式野球部などを創部。施設・設備も改修を進めます。「男子生徒の活躍の場を広げたい」と話す浅沼さん。そして新たな象徴となる制服も男女共に一新することになりました。
さらに新生白百合学園となるために、学習面でも変革を遂げようとしています。「活力ある進学校を目指すため、授業内容をより充実させるなど、生徒がのびのびとしながら力を発揮できるような環境を提供していきたいです」と学習や部活動などさまざまな面で生徒に寄り添う体制を整えていきます。 「生徒たちに白百合学園に入って良かったと言ってもらえるような学園にするのが私の最後の使命だと思っています」と決意を新たにする浅沼さん。「神様が道を決めているのだから迷わず進みなさい」というお世話になったマ・スール(修道女の先生)からの言葉を胸に未来を見据え、前進を続けます。



