【嚥下障害について】③嚥下障害の予防 ~ひどい肺炎にならないために~

【嚥下障害について】③嚥下障害の予防 ~ひどい肺炎にならないために~

いわて医療通信
岩手医科大学 いわて医療通信

 前回嚥下障害の知覚面と運動面での対策について記載致しました。今回は特にその予防について記載したいと思います。

 2001年にARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)においてOne airway, one diseaseという概念が提唱されました。これは例えばアレルギー性鼻炎は、上気道(鼻から声帯まで)の疾患だけではなく、下気道(声帯から肺まで)と連動しており、気管支喘息との関連性が高いという考え方です。嚥下障害によって起こる誤嚥性肺炎についても同様のことが言えます。鼻や副鼻腔、上咽頭、口腔内の分泌物や細菌が誤嚥により肺に垂れ込みます。真菌などの場合、なかなかお薬では治らない可能性もありますので、予防が重要になります。

【予防1】 鼻漏が多ければ鼻の治療をしましょう。
 アレルギー性鼻炎などの粘り気の強い鼻漏はのどにたまりやすく、長引く咳、ひいては肺炎の原因になり得ます。ただし、温かい物を食べた時に水っぽい鼻漏がでてくるのは加齢変化による可能性が高く、この治療は困難です。

【予防2】 歯の手入れをし、虫歯があれば治療しましょう。
 舌に色がついている方は、スポンジ製の専用舌ブラシで週に1回程度舌の手入れをして下さい。糖尿病がある方は、歯が原因で頸部膿瘍になることもあるので注意が必要です。

【予防3】 サルコペニアの予防。
 サルコペニアとは、加齢によって筋肉量が減少すること、および筋力の低下のことを指します。サルコペニアでなければ、同程度の誤嚥があっても、咳き込む体力があれば肺炎にならない可能性が高いです。全身の筋肉量の増加が誤嚥を起こすリスクを低くしてくれます。

 これらの予防策が、少しでも皆さまのお役に立てましたら幸いです。

岩手医科大学医学部
耳鼻咽喉科頭頸部 外科学講座

阿部俊彦

■取材協力

岩手医科大学 >>

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