【出産後、気分が晴れない日が続く時】産後うつ病を知る

【出産後、気分が晴れない日が続く時】産後うつ病を知る

いわて医療通信
岩手医科大学 いわて医療通信

 あなたの周りに妊産婦の方、小さいお子さんを育てている方はいませんか。妊娠・出産・子育ての始まりの時期は、誰もが不安になりやすい時期です。そんなとき、何かしらの困難に直面すると精神的に不調をきたしてしまう場合もあります。この期間にみられる代表的な精神疾患である産後うつ病は、出産後に診断される「うつ病」のことを指します。妊娠中より症状が見られることもあるため、周産期うつ病といわれることもあります。

 産後うつ病となる原因は複数の要因が関与するといわれています。ホルモンバランスの変化、睡眠不足、ストレス、社会的なサポートの不足などです。ほかにも、個人の過去の体験、出産の困難さ、赤ちゃんの健康問題なども影響を与える可能性があります。ある疫学研究は、日本における産後1カ月時点での産後うつ病の有病率は14.3%と報告しています。また子育ては長期戦であるため、出産直後に限らず、産後1年くらい経過していても産後うつ病が発症するリスクが未だに高いことがわかっています。

 産後うつ病になると、気分が落ち込み、喜びや幸せを感じることが難しくなります。また感情のコントロールができずに泣き出してしまうことが多くなったり、イライラしたり、怒りやすくなることもあります。子育てがつらくなり、逃げ出したい、死にたいという感情が芽生えてくるまでご自身を追い込んでしまう方もいます。なお、マタニティブルーズでも似たような症状ですが通常は1〜2週間で症状が収まるのに対し、産後うつ病の症状は2週間以上続きます。

 治療方法として、まずは環境調整を行います。状況によっては抗うつ薬による治療が必要となります。もちろん妊娠中の方の場合は、お子さまへの薬の影響や母乳育児と併用ができないのではないかと不安を感じられるかと思います。薬以外にも、妊産婦のうつ病に効果が確認されている心理療法もあります。以前よりも医療情報が蓄積されていますので、治療者と患者さんとの間で情報を共有し、話し合いをしながら最前の治療方針を決めていくことになります。そして、パートナーをはじめとした周りの家族や医療スタッフ、地域の保健師などとの連携が重要となります。

 症状が続く場合は悩みを抱え込まずに、早めにお住いの地域の保健師、出産した病院、または精神科や心療内科の専門家に相談することをお勧めします。

岩手医科大学
神経精神科学講座

福本 健太郎

■取材協力

岩手医科大学 >>

この記事をシェアする

Facebook
Twitter