取材協力:山ぶどう農園 café 野の香
小岩井の一本桜を右手に西に向かって進むと、山ぶどうの木がずらりと並ぶ農園が目に入ります。雄大な自然の中で「山ぶどう農園 café野の香」を切り盛りするのは、栁舘誠さんと良子さんのご夫妻です。
秋田県出身の誠さんは祖父に連れられ幼い頃より山で山ぶどう取りに親しんできたため、社会人になってからも趣味の山通いを続けていました。やがて山へ行かずに山ぶどう取りができればと考えた誠さんは、雫石町に気に入った土地を見つけて購入、在職中から栽培を開始しました。ついには早期退職して山ぶどう農園に専念することを決意し、誠さんが栽培を、良子さんが収穫した山ぶどうを使った料理を提供するcafé野の香が誕生しました。
しかし経営は思うようにいかなかったと誠さん。「最初はコーヒーや山ぶどうを使ったケーキを提供していましたが思うほどお客さんが来てくれず、何かこだわりがなくてはと考えました。では何にこだわるかと考えた時、自分たちには山ぶどうしかないと」。そこで山ぶどうを全面に押し出したメニューを娘さんが中心となって考案しましたが開発は難航。一度は諦めかけたと言います。「山ぶどうは酸味が強いので、料理に使うのは難しいと感じました。ですが、その特徴が逆に他にはない個性になると考え、なんとか完成へと漕ぎつけました」と良子さん。苦労のかいがあり、山ぶどうメニューの種類が徐々に増えるにつれてお客さまも増加。今では山ぶどうならではの味をお目当てに幅広い客層が訪れます。
農園では5種類の山ぶどうを栽培しており、料理にはお店の名前の由来となった「野の香」という品種がふんだんに使われています。牛ロースの山ぶどう煮込みはフルーティーな甘味と酸味が感じられる人気メニュー。甘い、酸っぱい、濃厚と、品種ごとに違いのあるジュースの飲み比べもできます。
酸いも甘いも楽しめる山ぶどうを味わいに、ぜひ訪れてみませんか。